■「大災害はめったに起こらない」は神話に過ぎない

まず台風や洪水について見てみよう。平成27年(2015)には茨城北部の鬼怒川が決壊し、住宅3000戸以上が浸水した。次いで平成29年(2017)には九州北部の豪雨災害。降雨量が観測史上最大(9時間で780mm)を記録している。平成28年(2016)には北海道を3個の台風が直撃、「北海道に台風は来ない」という気象観測の常識を覆した。そして平成30年(2018)には西日本(中国・四国地方)をゲリラ的な豪雨が直撃し、220名以上の犠牲者を出した。

こうした異常な豪雨と洪水の頻発は日本だけでなく、世界的な傾向であり、その主な原因が地球温暖化にあることは世界中の科学者の一致した意見となっている。そして地球温暖化はCO2という特定の物質の排出だけが原因なのではなく、人類の営みそのものによって引き起こされていると警鐘を鳴らす科学者も少なくない。我々が豊かさを追求し続け、過剰な生産と消費のサイクルを止めない限り地球温暖化も止まらない。つまり豪雨災害はこれからも頻発すると言っても過言ではないのである。

次に地震。私たちの脳裏にある「震度6~7クラスの大地震はめったに起こらない」という経験則は過去のものになりつつあるようだ。2016年の熊本地震(最大震度7)、2018年の大阪北部地震(最大震度6強)、同年の北海道胆振東部地震(最大震度7)、そして今後確実視されている巨大地震として南関東直下地震(首都直下地震、30年以内の発生確率70%)、南海トラフ大地震(同確率70~80%)がある。

日本には現在特定されている活断層が2000以上ある。日本列島は地球の表面上をゆっくり移動する巨大な4つの岩盤(プレート)がぶつかり合う不運な場所でもある。一説には2011年の東日本大震災を引き起こした大地震が、日本列島にある他の多くの活断層やプレートを刺激した可能性があるとも言われているから、これらは大地震が増えている理由とつながっているのかもしれない。

東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)対策や豊富な地下水が利用できるといった理由で九州に工場を移した会社も少なくなかったが、2016年の熊本地震がその期待を打ち砕いた。今日では「地震はいつでもどこでも起こり得る」というのが専門家の一致した見方である。どの場所なら安全でどの場所なら危ないといった判断基準は通用しない。水たまりを避けるように地震リスクを避けることはできないのだ。