安心、それが最大の敵だ
特命全権公使大鳥圭介、日清戦争英雄の解任
明治22年(1889)6月3日、政府は元学習院校長大鳥圭介(戊辰戦争で幕府陸軍司令官、<敗軍の将>を自認)を清国在勤全権公使に任命した。彼の清国公使就任には、漢学・儒学の幅広い教養に加えて、日清両国は共同して欧米列強の帝国主義に対抗していくべきである、との彼の見識が主要閣僚に歓迎された結果であった。57歳。同年10月、晩秋の北京に赴任した。公使大鳥は、清国最高実力者・李鴻章はじめその側近らと交流を重ねて外交の実績をあげる。だが日清両国間に存在する朝鮮半島では戦雲が立ちこめていた。北にはロシアを抱えている。
2019/04/22