南海トラフ、首都直下地震防災対策基本計画も示す
3月28日の中央防災会議(会長・安倍晋三首相)で、政府はこれまで5つの地域に分かれていた地震対策大綱を、大規模地震防災・減災対策大綱として統合した。東日本大震災の反省を踏まえ、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波」を想定し全国で一体となって地震対策を進めるのが狙い。昨年11月に策定した南海トラフ地震特別措置法と首都直下地震対策特別措置法に基づく防災対策推進基本計画も同時に定め、それぞれ推進区域・地域を指定した。

また、政府は初めて首都直下地震を想定した政府業務継続計画も公表。非常優先業務として被災地域への対応のほか金融・経済の安定や防衛・安全秩序維持、外交処理など6つの非常時優先業務を定め、被災時には1週間、外部から庁舎に補給なしで優先業務を実施できる体制を目指すことを盛り込んだ。今後、9月1日の防災の日には首都直下地震を想定した総合防災訓練を、11月5日の津波防災の日には南海トラフ地震を想定した訓練をそれぞれ実施する計画だ。

南海トラフ地震防災対策推進基本計画と首都直下地震緊急対策推進基本計画の概要は以下の通り。

南海トラフ地震防災対策推進基本計画
科学的に想定しうる最大規模のマグニチュード9クラスの地震・津波を検討した。関東から九州までの29都道府県のうちおよそ700市町村を防災対策推進地域に指定し、うち沿岸部の約140カ所を津波対策強化地域とした。具体的な数値目標も明記した。2020年までに住宅の耐震化率を95%に高めるほか、公共建築物の耐震化率は15年中に90%に、公立学校については15年中に100%完了させる。基本方針とそれに対する施策を設定することで、今後10年間で想定される死者数を現在の約33万2000人から約8割減少させ、全壊棟数も現在予想の250万棟から半減を目指す。津波対策避難緊急事業として、津波避難タワーなど津波からの避難経路の整備に対する国庫負担割合を従来の1/2から2/3へかさ上げしたほか、集団移転促進事業を拡大。農地から住宅への転用をしやすくし、関連して移転が必要な社会福祉施設や病院、学校などの用地取得などに要する経費を国庫割合負担3/4として補助する。

首都直下地震緊急対策推進基本計画
マグニチュード7クラスの首都直下型地震とマグニチュード8クラスの海溝型地震を想定した。東京、神奈川、千葉、埼玉など10都道府県の約300市町村を緊急対策市区町村に指定し、そのうち千代田区、中央区、港区、新宿区の4区については中枢機能を維持するため首都中枢機能維持基盤整備等地区(以下、首都中枢地区)に指定した。首都中枢地区では備蓄倉庫や非常用発電設備などの設置に対し容積率が緩和されるほか、緊急輸送のための道路の拡張や公園の整備に関する認可が下りやすくなった。特定緊急対策事業として、重油などの貯蔵量制限を緩和したほか、廃校など補助金交付を受けた施設の避難場所や備蓄倉庫への転用ができるようにした。