海でもライフジャケットは効果絶大!

今回は川をメインで書きましたが、海についても海上保安庁がわかりやすい新規資料を公開しました。

出典:海の安全情報(海上保安庁) http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/mics/

その中では、シュノーケリング中にライフジャケットなど浮力体を必ず着用するように記載されています。

写真を拡大 出典:「夏季における人身海難の傾向と対策」(海上保安庁) https://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/keihatsu/2018_summer_man.pdf

また海では「助けてサイン」といって、手をふって救助を求めることが生存につながります。これについて、ライフジャケットなどの浮力体がない場合は、手をふることでかえって沈むことになっていくので、浮力体がない場合は、サインを送ってはいけないと書かれています。

写真を拡大 出典:「夏季における人身海難の傾向と対策」(海上保安庁)https://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/keihatsu/2018_summer_man.pdf

「人間は、肺に空気が入っていれば基本的に水に浮き、肺に空気が入っていないと水に沈みます。肺に空気が入っている場合、最大で人体の約5%(淡水では最大約2%)が浮きます。」(Water Safety Guide/海上保安庁)
https://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/marinesafety/00_totalsafety/06_swimming/11_attention.html
 
肺に空気があれば、淡水より浮きやすい海であってもライフジャケットの重要性が啓発されるようになっています。学校教育でも川のライフジャケット着用の啓発を避けてはいけないと思っていただければと思います。

最後に「教えてドクター」プロジェクトの佐久総合病院佐久医療センター小児科の坂本昌彦医長さんからのコメントをいただきました。「教えてドクター」は、災害時の赤ちゃんやこどもの話、そして今回紹介した溺水だけでなく、熱中症の啓発でもわかりやすいとニュースになっています。

どうしたらこのようにエビデンスベースで正確な情報をわかりやすく、そして、親にちゃんと寄り添った姿勢で啓発できるのかのヒントをいただければと思ってお聞きしました。

――― いつもわかりやすい情報ありがとうございます。教えてドクターに取り組まれた経緯を教えていただけますか?

坂本先生) 以前福島県の山間部で仕事をしていた当時の経験がベースになっています。その地域は神奈川県と同じ広さなのですが、当時私と妻の2人しか小児科医がいませんでした。

それでも保育園は13園あり、子どもたちはいます。お母さんやお父さんは深夜でも片道1時間半以上かけて、例えば熱が出たお子さんを僕らのところまで連れてきていました。

お母さんたちにホームケアや病院受診の目安などの知識をつけていただくことができれば子育て不安も軽減できると考え、冊子を作って、地域の保育所を巡回して出前講座を行いました。

その後佐久に移った後も、市や医師会の理解も得られたことから、当地域でも同様の活動を始め、イラストデザイナーとともに冊子を作成し、出前講座を行いました。また子育て世代はスマホ世代でもあるので、アプリを開発し、情報が届きやすくなるように工夫しました。

最近はSNSを通じて正しい情報を提供できるようにも心がけています。

――― 溺水の記事を作成するにあたり、これだけは伝えたいと思われた事や、実際の診療で感じられていることがあったら教えてください。

坂本先生) 今年4月に当地域で保育園に通う3000名の保育園児の親にアンケート調査を行いました。回答を得た2000名のうち、子が溺れかけた経験があると答えた親は820名(41%)に上りました。

子が溺れかけている経験を少なくない保護者が持っていることが分かります。また、その9割は自宅の浴槽でした。お風呂は危険だという認識を持っていただければと思います。

また、その8割は溺れた時に悲鳴や声は出さず、6割は音がほとんどしなかったと答えていました。隣の部屋にいても音でわかるから大丈夫ではないと知ってほしいと思います。それはプールや川・海遊びでも同じです。

また、水やお湯から引き上げた後、もし意識がなければ人を呼びつつ、呼吸と脈を確認し、なければ人工呼吸と心臓マッサージを始めなくてはいけません。この初期対応はその子の一生を左右します。

わが子を守るためにも、保護者が子どもの心肺蘇生法(BLS)を学ぶ機会が増えればと願っています。

――― 最後に抱負などあれば教えてください。

坂本先生) いつかアプリの外国語版(英語や中国語)が作れたらいいなと思っています。また、教えてドクターの活動は、将来的には医師の活動ではなく、地域の保護者の皆さん自身の活動として広がっていけばいいなと思います。

お互いに学びあい、教えあって、地域に根差した活動になり、医療者はそれをサポートする。そんな活動が続いていくのが目標です。

――― 坂本先生、お忙しいところインタビューにお答えいただきありがとうございました!2000人中820名(41%)もこどもの溺水経験があるというほど、溺水事故はいつ起こってもおかしくないのですね。家庭内はもちろん、これからの水辺の事故の啓発は教えてドクターみたいに正確で実効性のある啓蒙ができればいいなと思っています。

(了)