小池座長(右)は気候変動の影響の知見を治水に生かす重要性を指摘した

国土交通省は温暖化など気候変動が激しくなる中、治水計画の見直しについて検討を進める。12日、「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」の第1回会合を開催。降雨量の増加などで水害リスクが高まっており、温暖化リスクを加味し治水計画を見直す際の一定の方向性を今年度内にとりまとめる方針。

温暖化の進行により、例えば時間雨量50mmを超える短時間強雨の発生件数は、1976~85年は平均174回だったものが2008~17年には約1.4倍の平均238回まで増加。洪水以外にも内水や高潮のリスクも増大。2015年の関東・東北豪雨や2016年の台風10号などの大型水害も続き、2017年には改正水防法が公布された。

このため降水量の増加などを考慮した治水計画となるよう、同検討会で方向性をとりまとめる。この日示された将来の降雨量について、気温が4℃上昇のシナリオの場合、今世紀末の全国一級水系における降雨量は1951~2011年と比較して約1.3倍、2℃上昇の場合は約1.1倍になるという国土技術総合研究所の試算が紹介された。水害リスクの評価に降水量の増加といった気候変動のリスクを加味していく。

同検討会では今後、水害リスク評価の標準化に向け具体的な河川でのシミュレーションや、試行版だが水害リスク評価の手引き案などを提示。今年度内に検討結果のとりまとめを行う予定としている。座長の小池俊雄・土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長は「治水の計画者に気候変動のリスクを考えてもらい、科学の社会実装を進めることが重要である」と指摘した。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介