ライフジャケットは必須

そして、家族で川遊びをするのであれば、絶対にしておいてほしいことがあります。それは、全員ライフジャケットを着けるということです。救助者がライフジャケットを着けていないなんて、それは、二次災害死亡率73%への道まっしぐらにしか思えません。

ライフジャケットが車のシートベルトと同じということについて毎年記事にしてきたので、子どもにライフジャケットを装着する方は増えてきたように思います。毎年川遊びをしていますが、浸透していることを実感しています。でも、パパで装着している人はほとんど見たことがありません! 恥ずかしいからでしょうか? 周りがやっていないから?

しつこく言います。家族で川遊びをしたとき、最も「死亡フラグ」が立っているのはパパ、あなたです。「男性、家族連れ、救助に行く」この三つに該当するのですから。でもライフジャケットの装着で、このフラグを外すことが可能になります。

以下は過去に書いたこの記事のおさらいです。

川の水難事故に、泳ぎのうまいへたは全く関係ない!? 海のアドバイスは川では使えません!~川遊びのライフジャケットはシートベルトと同じくらい重要~

川でライフジャケットを着ける理由は四つです。

1. 水の比重が軽いこと

真水は海水より比重が軽いので、人が沈みやすく、海で泳げても川で泳げるとは限りません。海水の比重を1.02とすると、体の4%が浮く計算ですが、真水だと空気を肺に含んでも2%の浮力しかなく、海の半分しか浮きません。また同じ水とはいえ、プールで泳げても川では沈むかもしれません。川にある空気含有量が多い場所は、水全体が空気によってさらに比重が軽くなっているからです。

2. 川には流れがあること 

写真を拡大 公益財団法人 NO MORE 水難事故2020より引用https://www.kasen.or.jp/Portals/0/pdf_mizube/suinan_2020.pdf

秒速1メートルだと1秒間に1メートル先に流れてしまうので、救助もできません。流れるプールの速さの比でないのです(ただし、海の離岸流は秒速2メートルで川と同様に危険です)。上の図のようにまっすぐ対岸に泳ごうとしても下流側に流されるでしょう。また、体が垂直方向に受ける動水圧は流れの2乗になります。流れが速くなると、イメージしているより強い力を感じる可能性があります。

3. 川の流れが複雑であること

写真を拡大 公益財団法人 NO MORE 水難事故2020より引用https://www.kasen.or.jp/Portals/0/pdf_mizube/suinan_2020.pdf
 

下向きにひっぱられる場所があることはご存じですか? 滝つぼや堰堤(えんてい)で遊んでいる方も結構いますが、下向きに引っぱられるだけじゃないですよ。

写真を拡大 公益財団法人 NO MORE 水難事故2020より引用https://www.kasen.or.jp/Portals/0/pdf_mizube/suinan_2020.pdf

循環流とかもあるんですよ。堰堤はライフジャケットを着けていても行きたくないです。ライフジャケットを着けていても助からない場所は避けつつ、ライフジャケットで遊ぶという使い方をします。

4. 流水は体温が奪われやすい

水の熱伝導率は空気に比べ20倍以上なので、あっという間に体温が下がります。滝を登攀する遊びとして「沢登り」というものがあるのですが、大きく2種類のやり方があります。ぬれないようにする山岳スタイルと、キャニオニングといってウエットスーツを着て泳ぐこと前提のスタイルです。

前者で川に落ちた場合、低体温症で命を落としやすいです。2010年に起こった秩父での救助ヘリ墜落事故の一次災害は、川に落ちた方の低体温症でした。救助ヘリが墜落した後の二次災害の後、新聞記者の方の三次災害も起こっています。コロナ期に人混みを避けて人のいない山間部に入る人もいるかもしれませんが、湧水があったり、日陰も多くなる山間部の水温は夏でも低いです。ライフジャケットの装着は低体温症対策にもなります。

ということでライフジャケットは、まず最初に絶対に装着しなければいけないマストアイテムです。パパが着けずに川に入っている場合、リスクコントロール力がなさ過ぎかもしれません。もちろん、十分にスキルのある人が状況に応じて装着しないことまで否定するわけではありません。潜る際に浮力が邪魔になることもありますので。でも、初めて川に行くのにライフジャケットを着用しないことは、何度も言いますが、パパ、死亡フラグ立ってますからね!