5、白熱電球の知見(2)
もう一点。白熱電球で展示物が燃焼すると認識できなくても、熱くなることだけでも認識できていれば、こどもがやけどするかもと想像できたのではと思います。こどもは白熱電球でやけど事例があります。

写真を拡大 国立成育医療研究センターで2006年11月~2013年3月までに収集された22322件の事故データを検索http://kd-wa-meti.com/search/injurySearch.phpから引用

こどもの遊び場に白熱電球を置くなんて、こどもの行動を知っていればあり得ないことです。

以上、1と5はこどもの行動について、広く社会に知られていないことに原因があるかなと思います。過度にこどもの利用が制限されればいいとは思いません。焚き火はやってほしいと思っています。しかし、危険を認識しつつ重大な結果を招かない範囲内で対応を見守る行為と、認識しないで放置する行為は異なります。今回の事件は後者だったと思っています。

そして、2〜4は、防災教育も含め、教育が効を奏していないのではないかという問題提起です。履修しない、学んでも実体験を伴っていない、それが積み重なり、知恵を次世代につなげられていないのではないかと危惧しています。

物理教育の現状と問題点
東京工芸大学工学部紀要 Vol.38 No.1(2015)
https://www.t-kougei.ac.jp/research/pdf/vol38-1-08.pdf
(東京工芸大学工学部基礎教育研究センター教授/江崎ひろみ氏)

「エリートを育成することも 大事だが、同時に広く子ども達に科学への興味を喚起する 取り組みも必要である。例えば、世田谷区では「自分の責 任で自由に遊ぶ」をモットーにした遊び場、プレーパーク を設けている。ここでは、常駐のプレーリーダーや地域 のボランティアのもとで、普通の公園ではなかなかすることができない焚き火や泥遊び、木登りなどを行うことができる。自然の中で自主的に遊び、工夫し、工作などをする 体験から科学への興味は生まれてくるであろう」


本来、最後は佐伯健仁君のご冥福をお祈りいたします・・と書くべきところだと思います。でも、目の前でお子さんを失った親御さんの気持ちを思うと、その言葉がうすっぺらく思えてしまってなりません。私も含め、それぞれの人がそれぞれの分野で、決してこんな事故を繰り返さない方策を練っていただきたいと願っています。

(了)