マクロン大統領が掲げた「不平等との闘い」

8月24日に開幕したG7首脳会議では首脳宣言の採択が見送られた。その要因は、反保護主義、自由貿易や気候変動対策を巡って参加国の隔たりの大きさであり、地政学リスクや環境リスクの根深さが窺える。それらから脱却するために議長国であるフランスのマクロン大統領が『不平等との闘い』を主テーマとして掲げた。

グローバルな安定と平和を維持するために以下の5つの目標と優先課題を設定した。①ジェンダー平等と運命の不平等と闘う、②環境保全を含む気候変動対策への資金調達によって、環境の不平等を削減、③より公正で公平な貿易・租税・開発政策を推進、④安全保障上の脅威とテロに対する毅然とした行動、⑤デジタルや人口知能によってもたらされる機会を適正に活用。この内容は1月のダボス会議、6月の大阪サミットと基本的には同じ流れを汲んでおり、国家間ではく、国境を外した世界レベルでの取り組みが肝要であることを示唆している。SDGsの達成は、企業単体は勿論のこと国レベルおよびび世界(地球)規模で取り組んでいかないと不可能である。

SDGsに潜むリスク

最後にSDGsの17の目標とそれに潜むリスクを紹介する。17項目の目標を達成するためには、それぞれが達成に向けた阻害要因、すなわちリスクに対応しなければならない。たとえばエネルギーについては、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保することが目標であるが、供給基地のインフラ整備などの投資が必要となる。現有エネルギー源からの切り替えにあたって一時的な経済停滞の懸念もある。化石燃料に依存している国や企業にとっては大きな課題である。企業としてSDGsを推進するに当たり、斯様な整理をしてリスクの所在を明らか(把握)にして、対策をこなさなければ新たなエネルギー源の確保もできなければ気候変動などへの影響も懸念視される。17の目標が達成できないのは、それぞれが達成できないのではなく、リスクのドミノ効果同様に、他の目標も達成できない負の連鎖を呼ぶ可能性が高い。

世界経済フォーラム発行のグローバルリスク報告書によれば、リスクは経済・社会・環境・地政学・テクノロジーの5つに分類されているが、SDGsの17の目標が達成できないとどのリスクを誘発するか、あるいはリスクが残存するかをSDGsの目標の番号ごとに振った。
・ 経済リスク(①~⑯)
・ 社会リスク(①~⑯)
・ 環境リスク(②③⑥⑦⑪⑬⑭⑮)
・ 地政学リスク(①②④~⑧⑩⑪⑬⑭⑯⑰)
・ テクノロジーリスク(⑨⑪⑫⑭)

 

本件はあくまでも私見であり、実証データに基づいた分析ではないことをご容赦いただきたい。リスクも日々変容してきている。昔では考えられなかった首都圏直撃の風水災も規模を毎回大きくしてきている。慣れたリスクではないことを認識いただくと共に、喉元過ぎれば熱さ忘れる、ではないが、南海トラフ級の大地震や風水害のリスクも決して軽視せず、それらへの万全なる備えを怠らないことも合わせてご検討いただきたい。

(了)
マーシュブローカージャパン株式会社 
代表取締役会長
平賀暁