■ 工場の災害リスクと対策

大地震が起こるたびに、工場内に複雑に張り巡らされた配管やダクト、様々な機械類の破損によって壊滅的な被害を受ける様を、私たちは繰り返し目の当たりにしてきた。しかしその一方で、地震に備える対策を事前に講じたことによって深刻な被害を免れた事例も枚挙にいとまがない。

工場の防災・減災対策にはある程度決まったやり方がある。例えば重要な生産設備(単体の機械装置など)をアンカーボルトやL字金具で固定したり、重心の高い縦長の装置の上部を3方からワイヤーで固定することによって、地震の衝撃による位置ズレや転倒による周囲の設備や壁の破損を避けることができる。また、天井クレーンはガレキの撤去などに威力を発揮する。

他に重要なものとして次の3つがある。

(1)受電設備の対策
日頃はあまり目に触れない場所にある受電設備(キュービクル)や電気室は工場の心臓部と言っても過言ではない。地震の衝撃やその間接的被害としての火災、液状化、地盤沈下、水害により影響を受ける可能性があるため、被災した場合の仮復旧手順を決めておくとともに、これらが浸水被害を受ける可能性があるなら、思い切って安全な高い場所に移設するなどの工夫も必要だろう。

(2)交通インフラの寸断や輸送手段確保の問題
自家用トラックで工場から入出荷を行っている場合、災害時にはそれ自体がボトルネックになる可能性がある。日ごろから外部の運送業者を開拓しておくことが大切。一般に運送業界は、非常時の業者間連携や輸送ルートのノウハウを駆使して流通のマヒを乗り切れることが期待できる。陸路以外に海路(貨物船やフェリー)や空路(貨物輸送機)のオプションを視野に入れておくことも有効である。

(3)仕入先の被災への対応
仕入先からの部品、原材料などが不足・欠品することを想定した事前対策として、例えば重要品目については自社のストックを増やす、複数の拠点(製造元や地方の事業拠点など)に分散保管する、少し時間をかけて代替調達先を開拓する、特殊性の高い希少な部品や原材料の割合を減らし、汎用品に切り替える、といった方法などが考えられる。仕入先の被災はBCPの未策定や防災意識の低さが一因となっているケースも少なくない。仕入先にもBCPを策定するよう働きかけたいものである。