2019/05/13
知られていない感染病の脅威
日本国での届け出は年間1.7万人
日本国内での、2016年に新たに届け出のあった結核患者数は1万7625人でした。患者の出生国が判明したのは1万6842人でした。そのうちの7.9%(1338人)だけが外国生まれであったことが分かっています。ヨーロッパの先進諸国と比較するとその割合はまだ小さいです。例えば、2010年のデータですが、ノルウェーでは85.3%、オランダでは73.5%、イギリスでは68.6%と外国生まれの人たちが過半数を超えており、フランスやドイツでもほぼ50%に近い割合になっています。
日本国内における新届出の結核患者総数における外国生まれの患者の比率は、近年、増加傾向にあります。国立感染症研究所においてまとめられたデータを図2に示しましたが、この図から、年齢階層別に見てみると全ての年齢階層において、年々、外国生まれの人の結核患者数の割合の増加していることが分かります。特に、15~24歳の若い年齢層の新届出結核患者における外国生まれの割合の増加の顕著であることが明白です。2016年には、ヨーロッパ先進諸国並みの過半数を超える58.6%(471/ 804)に達しているのです。
この事実は、外国生まれの若い世代に対する結核対策確立が、日本国内における結核患者を減らすための最優先課題の一つであることを示しています。特に、今後、国内における国外からの労働者、特に先ほどお示しした結核流行国からの若年層の人たちが、国内で急速に増加してゆくことは十分予測されます。そのような人たちを含めた国内における結核防疫対策の確立が不可欠です。
次回は、結核についてさらに説明を加え、他の抗酸菌感染症について紹介したいと考えています。
(了)
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