2019/04/16
本気で実践する災害食

小学生は各教室で2人組になり、アルファ化米に野菜ジュースを入れてご飯にします。今から約150年前のリンカーンの言葉「人民の、人民による、人民のための政治」を彷彿(ほうふつ)とさせる、まさに「小学生の、小学生による、小学生のための災害食作り」の挑戦でした。ガス、水道、電気には全く頼らない、本気度100%の挑戦です。低学年の教室では担任の先生が丁寧にアルファ化米をご飯にする手順を説明していました。1人が袋の口を開けて指で押さえ、もう1人が室温のジュースをこぼさないように、ゆっくり、ゆっくり注ぎます。しっかりかき混ぜたらチャックを閉めます。2人組は選手交代でもう1袋も同じことを繰り返します。各自1袋ずつ。教室に約2時間置いておき、お昼にはこの袋を開けて食べます。カリカリの乾いた米がチキンライス状のご飯になったので、生徒は目を輝かせていました。
おかずは、缶詰のポテトとツナのサラダ、飲み物は水です。アルファ化米と500ミリリットルのペットボトルは神戸市須磨区役所から、野菜ジュースはカゴメ株式会社から、そしてポテトツナサラダ缶はホリカフーズ株式会社からの寄贈でした。感謝です。
衛生面、ハラール、アレルギーについても学習
さて、その間に衛生面も学びました。手洗い、テーブルはアルコールで拭き雑菌消毒。ゴミの分別も学びました。残食は家に持ち帰りました。もし水が手元にないときは、お茶、麦茶、紅茶など身近な飲み物でご飯にすることができるということも学びました。
ハラールやアレルギーも学びました。
○小学2年の児童の中にハラール食が必要な子がいました。ハラール食とは、イスラム教を信じる生徒に必要不可欠な食べ物です(豚肉やアルコールなどは食べられないので、それらが含まれない食品)。本日の3つの食品はすべてOKで、こういうことも事前に調べました。
○卵アレルギー児童が1人いました。「ポテトツナサラダ缶」にはアレルギー物質として、小麦、卵、大豆、鶏肉が含まれていました。そこで、この児童には食べさせないで家に持ち帰るようにしました。
○賞味期限を点検しました。
アルファ化米・保存水(区役所から無償で提供されたもの)の賞味期限を調べた結果、いずれも賞味期限内で問題はなしでした。
○保健所には「臨時営業開始届」を提出し、食べた調理品を検体として校舎内に(後日、食中毒などが出たときの証拠品として)保管しました。
他の学校はどんな自助を生徒にさせているのか気になります。PTAや保護者が温かい豚汁などを料理して生徒に振る舞い、生徒は「おいしかった、やったあ!」などと叫んでいるとしたら「人民による」ものではなく、大人が児童の主役を奪う悪例で、おせっかい。リンカーンの精神に寄り添ったことにはなりません。おいしくなくてもいいから自分で作らせ、挑戦させることが望まれます。
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