環境(Environment)と健康・衛生(Health)、安全(Safety)を、一体的にマネジメントしていくEHSを導入する企業が増え始めている。Safetyに「防災」や「事業継続マネジメント」も含め、より広い意味で「安全」を捉え推進する動きもある。
こうした動きの背景にあるのは、欧米を中心としたグローバル企業からの要求だ。欧米企業は、訴訟問題や風評被害などのリスクへの対策として、早くからEHSの推進に取り組んできた。その流れが、取引先などを含めたサプライチェーンにまで及んできた。
EHSを一体的にマネジメントするメリットは効率化だ。例えば化学物質にかかわるリスクを考えた場合、環境問題としては、漏洩による環境汚染が考えられるが、健康・衛生の視点からすると作業員の化学物質への曝露といった問題が考えられる。あるいは防災の視点から見れば、災害時における火災や爆発にも気を付けなければいけない。このように、リスクの発生源は同じにもかかわらず、環境と健康・衛生、安全それぞれにおいてまったく違う被害が起き得ることを考えれば、一体的に統合して管理した方が効率的で、さらに、さまざまなリスクを多角的に分析できるといったメリットもある。
EHSをマネジメントシステムの統合運用につなげる企業も出ている。例えば環境マネジメントシステムISO14001、労働安全衛生マネジメントシステムOHSAS18001、事業継続マネジメントシステムISO22301などを運用していくには、内部監査やマネジメントレビュー、外部審査などを行う必要があるが、これらを別々に実施していたのでは、多大な労力とコストが必要になる。EHSの方針のもと統合して運用することにより、効率化が図れ、審査費用などのコストも削減することが可能になる。
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【インタビュー】今なぜEHSなのか。欧米企業とは「大きな差」
そもそも今なぜEHSが求められているのだろう。 先進国とされる欧米との差はどうなのか? 日本企業はどう取り組んでいけばいいのか。 EHSの専門家である環境ワークス株式会社代表取締役の黒崎由行氏に聞いた。
2016/10/30
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【講演録】グローバル企業に求められるコンプライアンス~環境・労働安全衛生関連法規制の順守~
環境や労働安全などすべての関連法規の順守は、企業にとって容易ではない。EHSの視点から企業に求められるコンプライアンスは、どのような点に配慮が必要なのか。8 月3日に本誌が主催したEHSセミナーで、ビューローベリタスジャパン株式会社執行役員戦略事業部部長の水城学氏が講演した。
2016/10/30
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【先進事例】組織体制をシンプルに 環境を柱に一体的に推進
大手製薬会社の中外製薬もEHSを統合させた全社的マネジメント体制の整備を進めている。本社や支店、工場、研究所をそれぞれ1つの事業所とみなし、CSR 推進委員会が統括する体制だ。これまで工場で認証取得していた環境マネジメントシステムISO14001を応用し、すでに効果が出始めているという。
2016/10/30
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【先進事例】海外顧客の要求に応える 統合マネジメントでEHSを推進
半導体の製造装置や液晶テレビなどに使われるフラットパネルディスプレー製造装置などの開発を手がけるSCREENグループは、国内ではいち早くEHSの取り組みをスタートさせ、現在グループ全体で環境と労働安全、さらには防災・事業継続を一体的に推進している。理由は海外のメイン顧客である半導体メーカーからの国際標準に準拠したさまざまな活動の要求だった。
2016/10/30