第9回 カーボンフットプリント(CFP)プログラムの成立過程と基本構造
プログラム運営者、事業者、ステークホルダーが連携して運営

島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
2024/08/08
環境リスクマネジメントに求められる知識
島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
現行の「カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム」は、産業環境管理協会(JEMAI : Japan Environmental Management Association for Industry )が、国のCFP( Carbon Footprint of Products) 制度試行事業の成果を引き継ぎ、2012年4月より運営しています。CFPプログラムは、(A)プログラム運営者、(B)事業者、(C)ステークホルダーが連携して運営しています。第8回に引き続き、CFPプログラムの成立過程と基本構造を中心に解説いたします。
CFPプログラムは、産業環境管理協会が、国のCFP制度試行事業を引き継ぎ運営しています。CFP制度試行事業とは、経済産業省が中心となり、農林水産省、国土交通省、環境省が、2009年度から2011年度の3年間、試行事業として実施した基本的ルールの整備と実証実験です。CFP制度試行事業の成立過程と国内外の動向は、図表1のとおりです。
図表1で示したPCR (Product Category Rule) とは、同一商品またはサービスの種別ごとの共通のライフサイクル・アセスメント(LCA : life cycle assessment )算定基準のことです。本基準は、PCRの公平性や透明性を確保するために、すべてのPCRに共通する概念となる策定基準を試行的に定めたもので、算定の正確性や簡便性などの観点から、策定後も常時見直しと改善が行われています。
まず、国内動向をみますと、2009年度は、PCR認定とCFP検証の方法、課題の抽出、データベース構築の開始などを実施しています。
2010年度は、2009年度試行事業を踏まえた見直しが行われています。例えば、多様な表示のあり方、広範囲のPCR、サービス分野の検討、PCRの既存商品における商品の拡大とニーズの反映、データベースの整備などを実施しています。
試行事業最終年度2011年度は、ニーズを踏まえたサービス分野と検証スキームの実証実験の取り組み、消費者コミュニケーションの促進、国際潮流と協調などに取り組んでいます。
このように、3年間は、2012年度以降の民間移行を念頭において、試行事業を推進しており、2012年4月から産業環境管理協会へ移行しています。
次に、国外動向をみますと、ISOなどの国際的な制度の協調を図るため、国際会合へ2009年度より継続して参加しています。2009年度は、カイロ会合、ウイーン会合、東京会合へ参加し、2010年度は、レオン会合、トリエステ会合へ参加し、2011年度は、オスロ会合、トロント会合へ参加しています。
2012年度以降では、2013年にライフサイクル・アセスメント国際規格標準仕様書ISO/TS(International Standardization Organization/Technical Specifications)14067を公表しています。
このCFP制度試行事業において、登録申請からCFPマークの表示までの手続のフローは、第1から第3段階まであります。第1段階は、CFPマーク付与を希望する事業者は、CFP算定・表示を行うための前提条件となるPCRの原案策定計画をCFP制度試行事業事務局宛に申請・登録します。
第2段階は、作成されたPCR原案は、意見公募(パブリックコメント)、専門家によるPCRレビューを受けた後で、PCR認定委員会での審査を受けます。
第3段階では、当該製品に関するCFP算定結果は、表示内容と合わせてCFP検証パネルの検証を受け、適当と認められるとCFPマークの使用が許諾されます。
このような第3段階までの手続により、申請者は、対象製品にCFPマークを表示し、販売を開始します。国の試行事業での成果は、2012年3月時点で73種類のPCRが認定され、469の対象製品(サービスを含む)がCPF認証済みであります。
なお、第1段階から第3段階までの手順の内容は、次の10回において、詳しく説明いたします。
環境リスクマネジメントに求められる知識の他の記事
おすすめ記事
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方