初夏の異常高温――5月の気象災害――
北海道佐呂間で39.5度

永澤 義嗣
1952年札幌市生まれ。1975年気象大学校卒業。網走地方気象台を皮切りに、札幌管区気象台、気象庁予報部、気象研究所などで勤務。気象庁予報第一班長、札幌管区気象台予報課長、気象庁防災気象官、気象庁主任予報官、旭川地方気象台長、高松地方気象台長などを歴任。2012年気象庁を定年退職。気象予報士(登録番号第296号)。著書に「気象予報と防災―予報官の道」(中公新書2018年)など多数。
2024/05/28
気象予報の観点から見た防災のポイント
永澤 義嗣
1952年札幌市生まれ。1975年気象大学校卒業。網走地方気象台を皮切りに、札幌管区気象台、気象庁予報部、気象研究所などで勤務。気象庁予報第一班長、札幌管区気象台予報課長、気象庁防災気象官、気象庁主任予報官、旭川地方気象台長、高松地方気象台長などを歴任。2012年気象庁を定年退職。気象予報士(登録番号第296号)。著書に「気象予報と防災―予報官の道」(中公新書2018年)など多数。
2019(令和元)年5月26日、筆者はアメダスの気温データに注目していた。北海道の上空に、真夏でもあまり見られないような高温の空気が流れ込んでいたからである。
この日、北海道のオホーツク海側の佐呂間町では、未明から気温が摂氏10度以上を示した。2時26分に観測した摂氏13.5度がこの日の最低気温となったが、これは平年(摂氏5.5度)より8度高かった。佐呂間では前日に最高気温が摂氏32.9度に達し、5月としての日最高気温の極値(気温の最高記録)を更新していて、その暖気がまだ残っていた。明け方5時には早くも気温が摂氏20度を超え、日最高気温の平年値(摂氏18.6度)を突破した。その後も気温はぐんぐん上昇し、8時10分には前日の最高気温を突破した。さらに、9時には摂氏35度を超え、猛暑日出現となった。結局、佐呂間ではこの日、14時07分に摂氏39.5度の日最高気温を記録した。これは、5月に観測された気温としては、佐呂間町だけでなく、国内で最も高い記録となってしまった。
この日は全国的にも気温が高く、全国で850人が熱中症のため救急搬送され、そのうち4人が死亡した。
表1は、5月の国内の最高気温ランキングである。この表は北海道の地点に限ったものではないのだが、上位21地点中、北海道の地点が20地点を占め、いずれも2019年5月26日に記録されたものである。わずかに、埼玉県秩父市の1993(平成5)年の記録が、第19位タイでランクインしている。この日、北海道東部では、5月としてだけでなく、通年の最高気温の極値(歴代1位の記録)を更新した地点が多かった。
図1は、2019年5月26日14時の気温と風の分布である。気温は等値線と着色で、風は矢羽で示されている。太い等値線は摂氏35度線であり、北海道の十勝地方からオホーツク海側にかけて、濃赤色で着色された摂氏35度以上の高温領域が広がっている。より東の、根室地方の内陸部も摂氏35度以上の高温領域になっている。この日の北海道は西または南西の風が卓越し、沿岸部では毎秒10メートルを超えているところもあった。摂氏35度以上の高温領域は、山地の風下側にあたり、西風が山を越えて吹き下りる場所にあたっていた。これに対し、風が海から吹き付ける場所は青系統の色で塗られており、気温は高くなっていない。このため、北海道内で気温の地域差が非常に大きく、20度近い較差がみられた。
5月は、真夏並みの高温が観測される月である。これは北海道に限らない。わが国のほぼすべての地点で、5月の最高気温の極値が真夏(7月・8月)の最高気温の平年値を上回る。
気象予報の観点から見た防災のポイントの他の記事
おすすめ記事
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方