2021/06/06
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
「顕著な大雨に関する情報」の意味すること
さて、新たに発表されることとなる「顕著な大雨に関する情報」ですが、これは線状降水帯が既に形成され雨がまとまって降っている段階で発表されるものです。線状降水帯をあらかじめ予測する情報ではないこと、また、線状降水帯が形成され始めたタイミングを示す情報でもないことに注意しておきましょう。
「顕著な大雨に関する情報」が出るのは既に大雨となっている時ですが、土砂災害の発生や中小河川の氾濫という面で見ると、どの程度危険な状況に該当するのでしょうか? 選択肢を2つ用意してみたので、「こちらかもしれない」と思われる方を選んでみてください。
1. これから先、土砂災害の危険性や中小河川の外水氾濫の危険性が高まっていく段階
2. どこかで既に土砂災害が発生している可能性が高く、さらに大規模な土砂災害が起こる可能性が高まっている段階。または、中小河川の外水氾濫が発生する可能性が非常に高い段階
これらの違いは小さいように見えるかもしれませんが、非常に重要です。仮に答えが選択肢1であれば多少のリードタイムが期待できます。しかし選択肢2のような状況であれば、即時の対応や災害の発生を見据えた行動が必要な段階であると言えるでしょう。
今回発表されるようになる「顕著な大雨に関する情報」は、選択肢1ではなく、より切迫性の高い選択肢2の段階で出される情報です。発表基準を詳しく見るとそのことが分かるので、この先確認していきましょう。
「顕著な大雨に関する情報」の発表基準
「顕著な大雨に関する情報」は次の4つの条件を全て満たした場合に発表されます(図1参照)。このうち、発表時点での土壌の状態や中小河川の状況を伺えるのは条件4です。
条件4には、「土砂キキクルにおいて土砂災害警戒情報の基準を実況で超過(かつ大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割以上)又は洪水キキクルにおいて警報基準を大きく超過した基準を実況で超過」という基準が設定されています。
「土砂災害警戒情報の基準を実況で超過」とは、過去にその地域で土砂災害が発生した条件と同様の状態になっていることを意味します。つまり、これは土砂災害が既に起こっていても不思議ではない状況です。
さらに条件4の中には「大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割以上」という基準が設けられていますが、この意味することは重大です。
大雨特別警報(土砂災害)の基準は、過去にその地域で発生した大規模な土砂災害の状況を捕捉する値で設定されたもの。いわば最悪の事態を予測するための基準が大雨特別警報(土砂災害)の基準なのですが、その基準が目前にまで迫っている場合に「顕著な大雨に関する情報」が出るという仕組みです。これは非常に危険な状況であり、大規模な土砂災害発生の可能性を見据えなければなりません。
条件4には、中小河川の外水氾濫に関する基準も含まれています。条件の中には「洪水キキクルにおいて警報基準を大きく超過した基準を実況で超過」とありますが、「警報基準を大きく超過した基準」は中小河川が氾濫する可能性が高い状況を捉えるために設定されたものです。そのレベルを「実況で超過」しているということは、河川が非常に危険な状況であることを示しています。
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