2018/03/19
事例から学ぶ
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半導体の元となるシリコンを研削、切削、研磨する半導体製造装置の製造と販売を行う株式会社ディスコ(東京都大田区)は、国内でいち早くBCPの構築に着手し、地震だけでなく新型インフルエンザなど感染症に対する危機管理にも力をいれている。同社の感染症に関するBCPを取材した。
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同社を訪問すると、いたるところに消毒液やマスクが見られる。正面玄関を入った受付の真ん前には、アルコール消毒スプレーが置かれており、すべての来館者に手指消毒の協力を呼び掛けている。社内にも、会議室の入り口や執務スペースなど、感染リスクが高い場所を中心にマスクボックスが設置されている。
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同社では、日常的な感染症対策として、従業員が体温を出社前に送信。37.5℃以上の場合は、部門長やBCM推進チームなど関係社員に社用メールや携帯メールが自動的に配信される。「この取り組みに季節は関係ない。毎日行っている」というのはBCM推進チームリーダーの渋谷真弘氏。もし発熱があれば解熱から3日間はゆっくり休ませる。3日間は呼気にウイルスが含まれている可能性が特に高いためだという。
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熱が下がって、出社する際の感染対策も徹底している。本人は解熱から10日間は社内でピンク色のマスクを着用することが義務付けられている。また、本人以外が発熱した場合も感染症に限らず、リスク保持の印として7日間はピンクのマスクを着用せねばならない。このピンクマスクをしている人物と一緒に会議をする場合は、その出席者は全員マスクを着用することもルールとして定められている。
万が一集団感染が疑われる場合の対処にも備えている。同社ではかつて、1部署で10人以上が季節性インフルエンザに感染した経験がある。そのため、こうした集団感染が生じた場合は、当該部署があるフロア全体を入場制限することを決めた。同じフロアに普段いる人にも、用があって他からそのフロアに入らざるをえない人にも必ずマスクを着用させる。該当フロアからの退出時には手指消毒をさせる。過去にノロウイルスの発症があった際は、前述の健康管理アプリを使って感染社員の行動範囲を確認。その範囲のトイレやロッカー、ドアなどを次亜塩素酸ナトリウムで消毒作業を行った。
「二次感染を防ぐことが大事。装備としては各種消毒液やゴム手袋のほか、全身を覆う保護具も用意し、備えている」と渋谷氏は感染拡大を防ぐための心構えと必要なものの準備についての重要性を語る。通常のマスクは全社員の3カ月分の使用量に相当する60万枚用意しているという。
災害対応にもつながるが、社員に対しては万が一感染症で外出できない場合に備えた備蓄に対しての補助や季節性インフルエンザ予防接種に対する補助も実施している。備蓄の補助はキャンペーン形式で期間を区切って行うもので最大3万円程度。予防接種は全額会社負担する。本人だけでなく、希望すれば家族も補助が受けられる。
ここまでしても、起こりうる最悪の事態を想定し、業務を継続させるための事業継続戦略を構築している。具体的には「スプリットオペレーション」(グループに分けたシフト勤務)と呼ばれる手法で最少人数でも業務を継続させる。そのため、平時から専任化を極力減らし、特定の社員に業務が集中しない体制を整えている。人事部署は発病時の休暇取得や万が一でも対応可能な勤怠の仕組みを構築している。これ以外にも社内外とコミュニケーションをとり協力を仰ぎながら対応していく意向だ。渋谷氏は「とにかく業務を止めてはいけない。そのためのBCPであるが、従業員が安心して働ける環境を整えることがBCPの実行力を向上させる」と強く話す。
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