災害対策本部をWeb上で簡単に構築・運用する方法
第5回:総務部門がつくる複合災害対策ポータルサイト

林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
2021/02/05
企業を変えるBCP
林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
前回の投稿で、コロナ禍における複合災害時の対策本部の設えや運用についてお話しました。その際に活用されるべき「災害ポータルサイト」についてが、今回のテーマです。
複合災害対策本部の仕事は、内容と環境がともに「ジョブ型」労働になるため、主に部門単位によるメンバーシップ型の業務を行ってきた企業はコラボレーション型の仕事の方法に慣れておく必要があります。
ジョブ型コラボレーションと一言で言ってもピンとこないかもしれませんが、簡単に言えば、一人である一定の(見える)結果を出さなければならない、そのために関係する仕事をしている人や特定のスキルのある人に協力を得ながら遂行する業務形態です。メンバーシップ型との決定的な違いは、個人が責任を持って最終結果を出し、その評価を受ける点です。
もちろん一人では仕事を完遂できないので、主に社内の関係者と協力し合いながら完成形に持っていくことになり、チーム(部門)で結果を出すのと違い、責任感を持って仕事に集中する必要が出てきます。時には人から助けてもらうために、電話以外のコミュニケーション能力を求められる仕事のやり方です。
同時に必要なのは「仕事の見える化」です。進捗状況は、途中経過でも、常に外部から閲覧できるかたちにし、コラボレーション可能な状態を維持します。
コンセプトは、だいたい以上のような考え方で進めます。
では、企業の規模によらず構築でき、かつ効果的と思われる災害ポータルサイトについて、構築から運用までを見てみましょう。
災害ポータルサイトの定義は「災害発生時に、全従業員および対策本部メンバー間のコミュニケーションを円滑にし、必要な情報を収集・共有・発信するための情報サイトであり、コラボレーションツールとして機能すること」です。
少なくとも、下記のような機能が求められます。
①災害情報の共有(国・自治体などが発表している災害情報、社内の被災情報など)
②被災内容の報告(スマートフォンなどで安否情報を報告したり、被災箇所・被災状況を写真に撮り、情報をアップするなど)
③遠隔地の従業員や関係者との「チャット」や問い合わせ(電話が使えない事を想定)
④対策本部の作業グループ(班)のLINE様のコミュニケーション機能
⑤連絡先一覧、備蓄品一覧など災害時に必要な情報を共有
⑥マニュアルやチェックシート、報告シートなどのドキュメントを保管
このような災害ポータルサイトを構築するにあたって、最も重要視しなければならないのは、総務部門のような対策本部の事務局だけで「運用」できることです。
そのためHTMLを知らずとも簡易に構築可能なCMS(コンテンツマネジメントシステム)である「WordPress」を例にし、運用のイメージをお話します。もちろんWordPress以外のCMSに成熟していれば、考え方はまったく同じですし、Microsoft社の MS 365を導入している企業ならSharePointやTeamsで同様の構成を組むことができますので、参考にしていただけると思います。
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