2020/07/17
危機管理の神髄
“全ての災害はローカル”指標
どの自治体(町・市・郡)政府も、緊急事態管理部門が計画・訓練・演習・現場対応・監視隊などの職務を遂行するために、献身的な正規雇用のスタッフを最小限の人数は必要としている。
自治体政府レベルの緊急事態管理部門で最小限必要とされるスタッフの数を、災害対応における長年の多様な経験を持つ者のみが得ることのできるニューヨーク市での貴重な教訓をもとに算出してみよう。
それらの貴重な経験によれば、米国の自治体政府において、住民人口に対する正規雇用の専門的な緊急事態マネジャーの割合は、最低限ニューヨーク市と同等のものでなければならない。
この議論のために、その割合を“全ての災害はローカル”あるいはADAL(All Disasters Are Local)指標と呼ぶことにする。
ニューヨーク市の住民人口に対する正規雇用の専門的な緊急事態マネジャーの割合は100万人に20人である。それゆえADAL指標の要件は以下のようになる。
ADAL指標は住民が50万人以上の自治体に適用される。住民が50万人未満の自治体(市と郡)における緊急事態管理部門の最低要員数は7人(部長・部長代理・計画主任・訓練主任・練習主任・軽減復旧主任・管理/補助金主任)である。7人で良いというのは、緊急事態管理部門は、現場対応、災害地図作成、ロジスティクス、情報技術などの重要なミッションについては他の政府機関に依存するという前提である。
あなたの市はどこにランクするか
ADAL指標に照らして要員の充足度を比較してみれば、米国内のほとんど全ての自治体の緊急事態管理部門は要員が不足していることが分かるだろう。例えばフィラデルフィアのOEMは31人、フェニックスは30人、ダラスは25人の正規雇用の専門家が必要である。
ADAL指標は郡にも当てはまる。ロサンゼルス郡OEMは200人、イリノイ州クック郡の国土安全保障緊急事態管理局は105人、テキサス州ハリス郡の国土安全保障緊急事態管理局は87人、フロリダ州マイアミ・デイド郡のOEMは52人が必要である。
あなたの地元の緊急事態マネジャーが必要とするものを持っているか見てみよう
あなたの市あるいは郡のADALインデックスを計算してみよう。簡単である。市あるいは郡の住民の数を100万で割る。それに20をかける。
それをあなたの地元の緊急事態管理部門の正規雇用のスタッフの数と比較する。
あなたの市あるいは郡の指標はどうだろうか? 100万人当たり15人以上ならあなたの公選役人は公約を果たし、あなたの市・郡はレジリエンスへの道を歩んでいる。仮に5人ならば必要とする人数の半分にも満たないということだ。
この重要な情報で武装して公選役人との会議に臨もう。「わが地元の緊急事態マネジャーは必要な人数に足りていない」と言おう。
ニューヨーク市OEMの例を挙げて「もし、超大型ストームのサンディが来たらどうなるのか?あるいは他のもの、もっとずっとひどいものが来たらどうなのだ?」と質問しよう。
全ての災害の母が来たらどうなるのか?
2018年1月13日、ハワイ州の全ての携帯電話に送られた緊急事態警報がパラダイスにおける晴朗な土曜日の朝を混乱に陥れた。
誰かがボタンを押し間違えて、現地時間の午前8時7分、人口の密集した諸島の端から端まで自動化されたメッセージが届き、彼らが知っているもの、愛しているものの全てが自分たちではコントロールできない力によって焼かれて灰になると告知された。
その出来事の後、ハワイ緊急事態管理局のバーン・ミヤギ局長は上司であるデイビッド・イゲ知事の傍らに立ち、殺到したTVカメラの前で「警告は誤りであった」と言った。
この過ちにもプラスに働く面があるとすれば、ハワイの人々に煉瓦壁の上からその向こうを見るように強いたことである。彼らは約38分間このきわめて現実的な脅威と戦い「私は今何をするのだろう」と自問することを余儀なくされた。
(続く)
翻訳:杉野文俊
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
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