2020/02/20
昆正和のBCP研究室
■伝達手段運用上の留意点
極めて基本的なことではあるが、ここでは先ほど示したさまざまな安否確認手段の中から、いくつか留意すべきポイントをピックアップして述べる(安否確認システムなどの付加価値サービスは割愛する)。もちろんこれらが唯一の方法ではないから、各種のツールを会社としてどのように活用するのかを話し合っておくとよい。
(1)携帯電話(スマートフォン)とメール

携帯電話がつながりにくくなった場合、つながるまで間を置かずに繰り返しかけ直すといった動作は控えたい。携帯メールを送信して返信を待つ、しばらく時間を置いてからかけ直す、というくらいのゆとりが必要である。場合によっては携帯電話会社の「災害用伝言板」が使用可能になったら、このサービスを運用するようにしよう。バッテリー切れにはくれぐれも注意が必要である。
なお、災害時には被災者がインターネットに接続できるよう携帯各社がWifi(公衆無線LAN)のアクセスポイントを無料開放する「00000JAPAN」(ファイブゼロ・ジャパン)サービスがある。これも電波の確保という点では利用価値があるが、認証手続きが不要なだけに機密情報などのやり取りは控え、セキュリティーには十分注意する。
(2)固定電話と公衆電話

携帯電話同士だけではスムーズなやり取りができない場合でも、携帯電話から固定電話へ、または固定電話や公衆電話から相手先の固定電話へかける、といった工夫をすると、意外につながることがある(東日本大震災の時は筆者自身もこれを体験できた)。
一方、携帯やスマホがなかなか使用できない状況にあっても、公衆電話を利用できれば「災害用伝言ダイヤル171」を使って安否の登録と確認が行える。例えば、従業員Aさんが171に自分の電話番号と安否を登録する、後日会社が171にアクセスしてAさんの電話番号を検索して呼び出せば、Aさんの安否が確認できるわけである。
(3)徒歩・自転車・郵便はがき

例えば週末に災害が発生して社員の安否がわからないとき、その社員が比較的会社から近い地域に住んでいる場合には、徒歩や自転車で確認に出向くという方法もある。訪問したが不在という場合は、会社からの指示などを書いたメモをポストに投函しておくことも一つの方法だ。
緊急性の低い利害関係者や、電気的な通信手段のほとんどが使用できない状況にある相手に対しては、郵便局と郵便の集配機能が維持されているなら、はがきや手紙で伝言をやり取りすることも可能であろう。
デジタルな方法に慣れてしまうと、これらの遅さが気になるところだが、大切だが緊急性は高くない相手との通信手段として有効であることを、繰り返し指摘しておきたい。
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