もっとも、日本は賛同国でありますが、法制化していない国でもあります。日本国内で違反しても罰則はなく、道義上、倫理上の責任を負うだけになります。では、無視したり、スルーできるかというと、説明責任は問われています。

国際規準違反については通告する機関とサイトが存在します。今回は、企業や自治体を批判したいわけではないので、具体的な引用は避けますが、違反したケースとして日本企業や地方自治体の具体的な名前が書かれています。

そこには、日本のとある自治体で母乳代用品が災害用備蓄品として、期限が切れる前に配布されたことが違反事例として掲載されています。また、パパの育児参加ということで哺乳びんによる授乳をパパに勧めている事例も違反例として記載されています。

詳しく知りたい方は以下を調べてみてください。最新のものはホームページに晒されていて、過去のものは冊子として販売されています。

■インターナショナル「国際規準」資料センター(ICDC)
https://www.ibfan-icdc.org/about-us

しかし、日本もスルーしている訳でばかりではありませんでした。2018年8月に表示については

なお、乳児用調製乳においては、乳児にとって母乳が最良である旨の記載の妨げとなることを防止するため、当該製品が乳児にとって最良であるかのように誤解される文章、イラスト及び写真等の表示は望ましくない

と、一部が法制で明文化されました。

さらに、世界の方は2018年5月に動きがありました。世界保健総会で

「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」(WHOコード)とそのほかのWHOの科学的根拠基づいた推奨を履行もしくは強化

と、先ほどから紹介しているWHOコードの履行や強化を求めています。また、

乳幼児用食品の不適切な販売促進をやめるために必要な措置を講じる

ここで不適切というのはWHOコードやOG-IFEに反する販売促進です。政府のプログラムやNPOのプロモーションでさえもNGとされています。規制が強化されているのがわかります。

特に、防災関係の人がちゃんと理解しておかなければと思う規定はこちらです。

災害時に科学的根拠に基づいた適切な乳幼児栄養ができるように必要な措置を講じる(防災対策、災害時の能力強化、部署をまたいだ調整を含む)

災害時に科学的根拠に基づいた適切な乳幼児栄養ができるようとエビデンスが強調されています。WHOコードなどWHOの様々な推奨は科学的根拠に基づいています。これを知っていながら反するのであれば、科学的根拠の提示が必要になってきます。

OG-IFEでは、母乳代用品や器具の寄付はしないし受け入れないことを明示し、必要であれば購入することを規定しています。

また母乳代用品は、一律に配布しない、販売促進をしない、配布する場合は個別にアセスメントし、母乳をあげている母親には十分な母乳育児カウンセリングと支援を提供することが明示されています。

つまり先週の記事で問題提起したように、

災害時の乳幼児の国際基準に違反する可能性のあるものはどれでしょう?
●災害時、避難所に届いたミルクを、子育て中の人全員に配る
●備蓄していたミルクが賞味期限前になる前に、市民に配布する
●母乳は災害時のストレスで一時的に止まることがあるからと説明して、日常からのミルクの備蓄を勧める

(※ミルクは粉や液体の人工乳を指します)

最初の2つは「一律に配布をしない」の規定に反することになり、最後の1つは、十分な母乳育児相談をしていない、および個別にアセスメントをしないで母乳代用品の使用をすすめるものとして、すべて国際基準に反することになってしまいます。

いかがでしょうか?「こんな規準があったなんて」と思う方もいるかもしれませんし、「もちろん知っていた。災害時、議論になっていたから」という方もいらっしゃるかと思います。では日本では、どのように考えるべきでしょうか?

ということで、またもや中途半端な終わり方で申し訳ありませんが、ここは、みなさんとじっくり情報共有しなければ議論もできないところなので、また次週お読みいただければ幸いです!

(了)