大雨注意報・大雨警報(土砂災害)・土砂災害警戒情報と「土砂災害の分水嶺」

「土砂災害の分水嶺」と「大雨注意報」「大雨警報(土砂災害)」「土砂災害警戒情報」の発表基準をイメージ化した図が次のものです。この図の中にある「土砂災害警戒情報の発表基準(CL)」は「土砂災害の分水嶺」に該当します。前述の通り、この分水嶺を超えて値が大きくなると過去に土砂災害が発生したことがある条件に類似するようになることから、図の中では「土砂災害がいつ起きてもおかしくない領域」と説明されています。

画像を拡大 図2. 大雨注意報・大雨警報(土砂災害)・土砂災害警戒情報の発表基準のイメージ(出典:気象庁作成の資料より https://www.jma.go.jp/jma/kishou/minkan/koushu180228/shiryou1.pdf

まず「土砂災害警戒情報」ですが、これは2時間先までに「土砂災害の分水嶺」に達する見込みがある時に発表されるものです。2時間先までというリードタイムは避難に当てるための時間が考慮されていますが、急にそうした情報が出ても高齢者などの避難が難しいため、「土砂災害警戒情報」が発表される前段階として「大雨警報(土砂災害)」が、さらに前の段階の情報として「大雨注意報」が発表される仕組みになっています。

もう一度先ほどの図2をご覧いただきたいのですが、「大雨警報(土砂災害)」の基準が置かれるのは「土砂災害の分水嶺」の1時間程度前のところです(図中の赤い縦線が該当)。「大雨注意報」の基準は警報の基準のさらに1時間程度前のところになります(図中の黄色の縦線が該当)。「大雨注意報」や「大雨警報(土砂災害)」はそれぞれの基準をこの先2〜6時間後に超えそうだというときに発表される形です。

警報や注意報の発表基準をハードルに例えれば、「土砂災害の分水嶺」の1つ手前に警報のハードルが、そのまた1つ手前に注意報のハードルが置かれていると言えるでしょう。「大雨注意報」や「大雨警報(土砂災害)」「土砂災害警戒情報」は、「土砂災害の分水嶺」から見て左側の安全な領域(土砂災害が過去に発生したことがない領域)の中で発表される情報であるため、ある程度のリードタイムが期待できます。ただし、雨の降り方が短時間のうちに非常にまとまる場合や情報の発表が遅れた場合は、リードタイムが限られることもあります。

「土砂キキクル」(危険度分布)と「土砂災害の分水嶺」

土砂災害の危険性を示す「土砂キキクル」も「土砂災害の分水嶺」が大きく関係しています(下図参照)。「土砂キキクル」では、濃い紫色・薄い紫色・赤色・黄色の4色で地域ごとの危険性が表示されます。このうち、「土砂災害の分水嶺」が直接的な基準として使われるのは薄い紫色と濃い紫色です。薄い紫色の表示が出ているところは、今後2時間先までに「土砂災害の分水嶺」を超えていく予測、濃い紫色は実況として既に「土砂災害の分水嶺」を超えていることを示します。黄色や赤色はそれぞれ注意報と警報の基準が判断基準として使われており、そのラインに2時間先までに達する可能性があるときに発表されます。

画像を拡大 図3. 「土砂キキクル」(危険度分布)の赤色、薄い紫色、濃い紫色の発表基準のイメージ。図の中の「土砂災害警戒情報の判断基準」とは「土砂災害の分水嶺」のこと(出典:気象庁のホームページより引用 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/doshakeikai.html

「土砂キキクル」で濃い紫色が表示されるところでは、今にも土砂災害が起こりかねないか、もしくは既に災害が発生している可能性があると見るようにしてください。下の図は熱海市伊豆山地区で土砂災害が発生し始めた当時の「土砂キキクル」です。熱海市全域がすでに危険な状態であったことはもちろん、熱海市以外の場所でも非常に危険な状態に直面していたところがありました。

画像を拡大 図4. 熱海市で土石流が発生したとみられる時間帯の「土砂キキクル」(出典;気象庁のホームページより引用)