2020/08/19
日本企業が失敗する新チャイナ・リスク
■訪日中国人のニーズ変化に対応できていない
「爆買い」が目的であるならば、「物」を購入する店舗にお金が落ちるようにすれば、確実に日本国としては利益が上がるでしょう。しかし「体験」を主体とした観光がメインとなれば、それらを「手配する業者」にしっかりと利益が出るように導かなければなりません。
ところが日本のインバウンド体制を見る限り、言語および習慣などの問題によって、受け入れ側の多くが移動や通訳、現地のガイドに至るまで「在日中国人(もしくは日本語が流暢な中国人)」が運営する企業・団体に委託することが多いのが現実です。

つまり、訪日外国人を増やすことで日本人の雇用も増やし、外資を取り込むことで政府が言うところの「力強い経済を取り戻す」方向とは、実態が異なっているように思えるのです。なぜなら、ビジネスマインドに長けた中国人たちは、日本においてもいち早く「上に政策あれば下に対策あり」を実践し、法人を立ち上げることで自分たちの懐にうまく利益が落ちるようにするからです。
これについては、中国人に一日の長があるのは自他が認めるところでしょう。

マスメディアでも話題となっておりましたが、中国人観光客向けにいわゆる「白タク」を運営する中国人を規制すべきだという話がありました。しかし、携帯電話とインターネットを巧みに使って商売をする中国人の前では、性善説を前提とする「規制」は効果を期待できません。
日本人が誇る「お・も・て・な・し」や、いわゆる無形のしきたり、約束事なるものは、中国人には分かりづらく、同胞たちが手っ取り早く目的を達成できる手法を提供してくれるのなら、それを活用しない手はないという現実志向が優先されてしまうのです。
では、これが「望ましいことではない」とした場合、果たして日本国内で1000万人にものぼる中国人観光客のニーズを満足させられるサービスを、現地日本人で提供できるでしょうか? 現実として、それは不可能です。
したがって、ある一定の観光客数を超えると、今のインバウンド体制では、ザルから水が落ちるように、本来日本人が享受すべきだった利益は、日本で活躍する中国人の懐に収まってしまうことになっているのです。
誤解がないように補足しておきますが、決して委託を受けた在日中国人事業主すべてが十把一絡げでよくないということではありません。筆者の友人にも日本が大好きで、インバウンドを対象とした旅行業を営んでいる中国人が多くいるのですが、彼らにしてもこれらの悪徳業者には大変困っているというのです。
つまり、委託する側が受託者を安易に選択しているという現実が、リスク増大、利益縮小につながっている。そうした自覚を持つべきということです。
今回のコロナ禍により、幸いにも一度立ち止まることができたことはよかったのかもしれません。その実、東京オリンピックで一儲けしようとしていた在日中国人や旅行関連の企業の多くが、日本を引き上げ中国へ戻ってしまったり、投機的に購入した不動産が値崩れを起こして大きな損害を被ってしまったりという話が、筆者の耳にも多く流れてきます。
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