2020/08/17
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
予測情報を通じて把握したいポイント
台風のときには情報を使って早めに影響の判断をしたいものです。その際のポイントとして3点ほど挙げましたので、参考にしてみてください。情報を使ってどのような影響を受ける可能性があるかシナリオを把握しつつ、そのシナリオ通りに事態が進むのか実況監視を合わせて行っていくといいでしょう。
1)全体として何ミリ程度の雨になるか?
災害に結びつくような雨量が台風によって見込まれるのかを把握するために、民間気象会社がインターネットのポータルサイトなどで配信する記事の中から総雨量の予測が図示されているものを探してみましょう。過去に災害が起こった時のような雨量やハザードマップの想定に使われているような雨量、過去の記録を上回るような雨量が見込まれるのであれば、特に危険な雨になりそうだという判断ができます。
2)目先数時間から15時間先までの雨雲の様子
全体的な降水量を確認したら、次は数時間先から半日程度先といった単位で雨の情報を確認します。この時に役立つものの一つが気象庁の「今後の雨」というツールです。これを利用すると、15時間先までの1時間ごとの雨量予測を地図上で把握することできます。もし時間雨量が強い状態が何時間にもわたって継続するような状況が予測されている場合、災害の危険性が高まっていく可能性があると判断できます。
3)高潮や暴風などの影響見込み
台風の場合は高潮や暴風なども踏まえて意思決定が必要であるため、注意報や警報の詳細情報(下図のようなもの)も確認しつつ、行動すべきタイミングを判断します。

注意報や警報の詳細情報は気象庁のサイトで確認できます。高潮も暴風も警報級の事象が予測される時間帯の前までに安全を確保しておきたいところです。
※気象警報・注意報の詳細情報(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jp/warn/
これらの情報を使いながら影響のシナリオを自分の中で準備していきましょう。
実況監視を忘れずに
気象予測はさまざまな誤差を含むため、先のことになればなるほど「ずれ」が生じやすくなります。このため、想定したシナリオの通りに事態が進展しているのかを確認していくアクションが欠かせません。特に気をつけたいのは、事前に予測された状況を上回って実況が悪くなっているときです。例えば、200ミリ程度しか降らないという予測に基づいてシナリオを組んでいたのに、ふたを開けてみると倍以上の降雨に見舞われるようなケースです。
状況の悪化に気づけないと対応が遅れてしまうため、当初の予測よりも悪くなる場合にはなるべく早く気づき、対応を変えていくことが求められます。そのために、実況と予測のずれを監視することが重要となるのです。
実況監視をする際には、次のポイントを確認していくといいでしょう。
○これまで何ミリ程度の雨量となっているか
降り始めからの積算雨量や直近の時間雨量、流域雨量などを確認し、当初のシナリオよりも悪化していないかを判断
○今後数時間で何ミリ程度の雨量となりそうか
気象庁の今後の雨などで目先の予報を確認
○影響を受けるタイミングは当初のシナリオ通りか
今後の雨や注意報・警報の詳細情報などで最新の状況を確認。大雨のピーク時点が前倒しになっていないかなどもチェック
○危険な雨の降り方をしていないか
気象レーダーを見て、発達した雨雲がかかり続ける形になっていないか確認
○どういった災害の危険性が高まっているか
河川の水位の情報や指定河川洪水予報、各種の危険度分布、土砂災害警戒情報などで影響面を確認
繰り返しになりますが、気象情報を使う際の基本は、情報から今後予測されるシナリオを得ることと、シナリオ通りに事態が推移するか実況監視することの二つです。どこかの時点で得た情報だけに基づいて行動をしていると、実況の変化についていけず対応が遅れる可能性があります。台風に限らず、豪雨の際などにも最新の情報も利用して判断を心がけましょう。
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