コロナ禍での避難に対する報道

「感染症拡大防止のため、避難所では3密を避けましょう」「避難所では必ずマスクをつけましょう」

確かに、避難所における感染症予防対策は非常に重要なことです。しかし「『避難所に避難する』ことが前提になっていることに違和感を覚えた」と磯打先生はお話されました。

2020年5月15日、日本災害情報学会から「避難に対する提言」が提唱されました。

写真を拡大 日本災害情報学会「避難に関する提言」

ここでは「新型コロナウイルス感染リスクのある今、あらためて災害時の『避難』を考えましょう」とタイトルが掲げられ、以下の言葉が示されています。

「避難」とは難を避ける行動のことです。避難所(※)に行くことだけが避難ではありません。
(※)「ここでいう『避難所』とは、指定緊急避難場所、指定避難所等自治体が指定する避難場所も含む概念で、地域の公民館など災害時に住民が避難する場所として認知されている建物等を総称しています」と提言書内で示されています。

この言葉を見て、ハッとした方、そうだったのか?と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。磯打先生のご近所さんも驚かれたお一人かもしれません。実は、この表記は内閣府が示している行動指針であり、本来は住民一人一人が認識しているべきことなのです。

しかし「『避難所へ来ていなかった』『避難所に来るのが遅れた』、だから被害が大きくなった」という報道を見ることで「何か起きる前にとにかく『避難所』に逃げないと!」と思い込んでいる方が、多くいらっしゃるかもしれません。

今回の提言書を出すにあたり、日本災害情報学会企画委員の方々は、全国からオンライン会議で集まり、複数日にわたり2~3時間の議論を繰り返し、「避難」という言葉を改めて住民一人一人に考えてもらえるように一枚の簡潔な提言書にまとめられました。