2016/10/25
業種別BCPのあり方
(3)サプライチェーン、業界、地域などでの連携を図るべき
日本企業のサプライチェーンは様々な取引先企業によって構成され、海外まで広がっていることが少なくない。また、多様なお客さまの要望に迅速かつ安価に応えるため、アウトソーシング、請負、派遣などの形で種々の企業が日ごろから自社の業務に関与する仕組みが出来上がっている。このため、自社のみを対象として事業中断対策を進めても、事業の継続は確実なものにはならない。
サプライチェーンの中で部分的な供給中断が生じたとしても、何らかの対応によって予定通りに製品を供給できるような仕組みを作るためには、サプライチェーン、業界、地域といった括りの中で事業中断への対応プロセスや、復旧目標を共有していく取組みが今後重要になってくると考える。
(4)多層防御による対策を進めるべき
多層防御(Defenseindepth)とは、もともとは軍事用語であり、幾重にも防御陣地を準備し、敵の侵攻をできる限り遅らせる手法をいう。この用語は情報セキュリティの分野でも使われている。この場合では、いくつもの防御手段を組み合わせることで、重要システムに対する攻撃や、情報漏えいを防止するという考え方をいう。
世の中には、「在庫を積み増せばよい」「BCPを作ればよい」「生産拠点を海外に移せばよい」といった「これがあれば大丈夫」という考え方も散見されるが、それでも事業中断リスクはなくならない。例えば、積み増した在庫による対応を前提に計画を作成していた場合、積み増した在庫も同時に被災してしまえば、その計画は有効性を失ってしまう。一つの手段に頼らず、複数の手段を講じることで、事業中断を防ぐことが有効だと考える。
次号では、各業界において事業継続を目指すうえで、具体的にどのような対策が検討されるべきかについて考えたい。
(了)
業種別BCPのあり方の他の記事
- 第23回 事業中断対策の今後(1)
- 第22回 自動車販売業の事業継続
- 第21回 緊急事態における企業の対応要員の行動
- 第20回 ガス業の事業継続(2)
- 第19回 ガス業の事業継続(1)
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/16
-
-
ラストワンマイル問題をドローンで解決へBCPの開拓領域に挑む
2025年4月、全国の医療・福祉施設を中心に給食サービスを展開する富士産業株式会社(東京都港区)が、被災地における「ラストワンマイル問題」の解消に向けドローン活用の取り組みを始めた。「食事」は生命活動のインフラであり、非常時においてはより一層重要性が高まる。
2025/09/15
-
-
機能する災害対応の仕組みと態勢を人中心に探究
防災・BCP教育やコンサルティングを行うベンチャー企業のYTCらぼ。NTTグループで企業の災害対応リーダーの育成に携わってきた藤田幸憲氏が独立、起業しました。人と組織をゆるやかにつなげ、互いの情報や知見を共有しながら、いざというとき機能する災害対応態勢を探究する同社の理念、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/09/14
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/09/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方