なぜ流行を繰り返しているのか

1976年以降現在まで、エボラ出血熱の流行を繰り返しているコンゴを含む西アフリカでの、エボラ出血熱防疫活動には問題が山積しています。その最大の問題点は、エボラ出血熱発生地域の著しく治安の悪いことです。2019年1月以降、医療従事者やエボラ出血熱を治療する施設などへの襲撃が198件も発生しており、医療従事者など関係者7名が死亡、58人が負傷しています。

もう一つの深刻な要因は、地元民が医療機関および医療従事者を信頼していないことです。死亡したエボラ出血熱患者の3分の1は、医療施設以外の場所で死亡しています。患者の多くは医療施設での治療を求めておらず、その結果、近隣の住民や親戚にウイルスを感染させてしまうことになっています。

このことは、エボラウイルスの感染拡大を止めるのに必要な、ウイルス感染経路の解明を困難にしています。多くの病例で、医療従事者が患者と接触できていないようです。この状況を打破するためには、医療従事者は、その地域社会との関係や結びつきを築く努力を重ね、地域住民の信頼を獲得せねばなりません。難しいことですが。

資金不足もエボラ防疫対策の実施を困難にしています。WHOは、エボラ出血熱対策に必要な資金が不足していることをすでに公表しています。具体的には、2019年2~7月までの間に必要な資金として、9800万ドル(約108億円)を見積もっていたのですが、現実には5400万ドル(約60億円)不足しているようです。

さらに、アフリカにおける獣医療の著しい遅れです。エボラ出血熱他アフリカに存在する、危険度の高い感染病のほとんどは人獣共通感染病です。従って、人に感染する前の動物(特に野生動物)におけるウイルス侵入状況を十分把握した上で防疫対策を講じ、動物から人へのウイルス感染防止を図らねばならないのですが、現状では不可能ではないかと懸念されます。

(了)