国内のカーボン・オフセットの取り組みは、環境省が2002年度より開始しています。2012年には、「カーボン・オフセット制度」と「カーボン・オフセット第三者認証基準」を創設して、温室効果ガスの排出量削減・吸収量増加を推進するための基盤を確立しました。2017年度からは、民間の「一般社団法人カーボンオフセット協会」が、運営を任されています。第5回に引き続き、国内外のカーボン・オフセットの取り組み状況の一端を紹介いたします。

(1) 国内のカーボン・オフセットの取り組み状況

企業による温室効果ガス削減のためのカーボン・オフセットの状況は、環境省の「2018年度環境にやさしい企業行動調査(最終版)」によりますと、「取り組んでいる」が約20%、「取り組む予定がない」が約38%、「分からない」が約42%の割合でありました。また、カーボン・オフセットに取り組んでいる実施形態(複数回答)をみますと、社員の通勤、業務ビルなどにおける電力使用などの「自らの活動」を対象とする企業が約50%、「商品製造・使用時やサービス利用時」を対象とする企業が約40%、「会議イベント開催」を対象とする企業が約22%を占めていました。さらに、企業が購入するクレジットは、「オフセット・クレジット(J-VER: Japan’s Verified Emissions Reduction)」が約54%と公表されました。

環境省による2015年の「カーボン・オフセットガイドラインVer.1.0」では、「カーボン・オフセット制度」と「カーボン・オフセット宣言」で利用されるクレジットとして、J-クレジット、地域版J-クレジット、オフセット・クレジット(J-VER)、都道府県J-VER、国内クレジットがあります。これらの詳細は、スペースの関係で、別の機会といたします。

ここで、クレジットの利用状況をみますと、2010年から2023年までの14年間のカーボン・オフセットのクレジット無効化・償却量 (J-クレジット、J-VER、国内クレジット)の累計推移は、図表1のとおりであります。

図表1では、無効化・償却されたクレジットが、2010年度に5万トン/ CO2であったものが、2023年度には644万トン/ CO2 (全認証量1150万トン/ CO2のうち)と約130倍に拡大していることがわかります。なお、無効化・償却量の内訳は、スペースの関係で省略いたします。クレジット(排出権)の無効化・償却は、温対法への報告やカーボン・オフセットのために企業や自治体などがクレジットを利用することでありますから、カーボン・オフセットの活動に参加する企業などが増加したことを意味しています。2024年4月時点でのカーボン・オフセットの取り組み件数は、1492件と公表されています。