環境省は、地球温暖化対策として2008年に、「わが国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」を公表しました。最大の目的は、二酸化炭素を相殺するカーボン・オフセットに関する理解の普及、民間の活力をいかした取り組みの促進と信頼性の構築および基盤を確立することであります。同指針は、2024年3月6日(第4版)に改訂されています。カーボン・オフセットは、これまで、ガイドラインの整備、温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の創設など、カーボン・オフセットに取り組むための基盤を確立させて、定着してきました。カーボン・オフセットの基礎的なしくみを中心に解説いたします。

(1)カーボン・オフセットの意味と効果

カーボン・オフセットとは、二酸化炭素(carbon dioxide: カーボンダイオキサイト)を、相殺(offset: オフセット)することに由来しています。

「指針」では、カーボン・オフセットとは、「市民、企業、NPOやNGO、自治体、政府など社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、カーボン・クレジット等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせること、すなわち『知って、減らして、オフセット』の取組みをいう」と定義しています。カーボン・オフセットの取り組みを行う一連のプロセスとしては、次の3項目を示しています。

① 自らの温室効果ガス排出量の認識 (知って)
② 主体的な排出削減の取り組み (減らして)
③ ②によっても避けられない排出量の全部または一部に相当する量を、クレジットまたは他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施することなどで埋め合わせ(オフセット)

したがって、カーボン・オフセットの取り組みを実施することは、社会構成員が地球温暖化問題を「自分ごと」として捉え、温室効果ガスを削減する活動を通じて低炭素社会(ローカーボン社会)への転換に直接的に貢献することになりますので、その意義は深いです。

また、カーボン・オフセットの特色には、地球温暖化防止対策の一環として、次の3項目の費用負担を通じ、自ら排出したCO2を埋め合わせる手法があげられます。

ⓐ 国連が認証・登録した排出枠を途上国から購入
ⓑ 風力発電や太陽光発電などCO2を発生しない自然エネルギーを利用・購入
ⓒ 植林活動などを担う団体・組織に寄付

これらの点から、カーボン・オフセットは、2050年度までにCO2排出量の目標を正味ゼロとする「2050ネットゼロ」達成に欠かせない手法であり、かつ温暖化対策を推進する効果があります。また、国内外の排出削減・吸収を実現するプロジェクト活動を資金面からバックアップする効果があること、さらに、このプロジェクトには、大気質・水質や植林・森林整備が実施されることによる地域の活性化と防災機能の強化を同時に実現できることが見込まれることから、複数の効果が期待されています。