2023/10/03
防災・危機管理ニュース
9月28日・29日、東京・代官山の商業施設にコンテナ型の独立電源ユニットがお目見えした。
輸送用の10フィートコンテナに0.5キロワットの小型風力発電と2.2キロワットの太陽光発電、8.8キロワット時の蓄電池を搭載。平時は倉庫や休憩所、待合室など多目的に活用し、非常時は被災地に運んで給電を行う。ファッションの街に突如現れたハードなフォルムを、多くの人が足を止めて眺めていた。
関東大震災100年を機に災害への備えの大切さを伝えようと、精密機器メーカーのNTN(大阪府大阪市、鵜飼英一社長)が代官山T-SITE内に展示したもの。「即想像できないかもしれないが、首都直下地震は必ず起きる。『そのときどうする?』というメッセージを伝えたかった。都市の繁栄を象徴する街に出展したのはそのため」と、自然エネルギー商品事業部の梅本秀樹事業部長はいう。
平時は多目的に活用、災害時は給電に活躍
ベアリング(軸受)大手の同社は創業100周年の節目にあたり、次の100年に向けた新機軸として2016 年に自然エネルギー商品事業をスタート。機械の回転や動力の伝達を支える独自技術を生かして高性能の小型風車を開発し、そこに太陽光パネルと蓄電池を組み合わせ、グリーン電力の独立電源を商品化した。
当初はグリッドからの給電が難しい場所に固定して置く定置型だったが、いつどこで起きるかわからない災害にも対応しようと移動型の商品「N3エヌキューブ」を開発。発電・蓄電設備をコンテナに積むことで機動力を持たせるとともに、生み出した電気でコンテナ空間の常時空調管理を可能にして平時にも用途を広げた。
実際、2019年の台風15号で大規模停電に見舞われた千葉県鋸南町に初号機を出動して支援を行うと、ESGへの関心の高まりや政府の国土強靱化政策を追い風に各方面から引き合いが増加。防災倉庫・水防倉庫、医療拠点、循環式エコトイレ、バス待合室などに採用され、着実に実績を伸ばしている。
今回代官山に出展したモデルは、平時は電動キックボードや電動自転車の充電ステーションに、災害時は現地に移動して携帯電話やスマートフォン、自動販売機などの給電基地にする。内部空間を授乳室やおむつ換え施設などに使えば、避難生活を質の面から支えることが可能だ。
「東京での展示なので都市型モデルを想定。独立電源の実物を見ることで、若い人が災害を『認知』してくれたらうれしい。そしてそこから、新しい用途のアイデアが出てきたらさらにうれしい」と梅本事業部長。今後は防災団体との連携を強めてさまざまなプロジェクトに参画、商品販路を全国に広げていきたい意向だ。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方