筒井:情報システムを教育や訓練、作成支援にまでもっていくことによって、標準化が図れるでしょうし、逆に独自色も出しやすくなるかもしれないですね。情報システムという共有の母体があってこそ、できるということですね。

田中:最初から標準化しようと考えては駄目ですね。今は、多様な地区の皆さんが自分の地区に応じたものを考え、作るべきです。それをインターネット上で持ち寄り、自由に発信していく。

森下:私は、特区として指定してやっていくということが大事だと思います。さまざまなツールがあるので、地域に合った形、重点の置き方、どの機能が地域にとっていいかなどを選び、後はシステムとして組み上げることが大切です。

筒井:おっしゃる通りです。ひとつ付け足したいのは、「地区防災計画」を作ってから維持していく、マネジメントが最も難しいと思うんです。意識をずっと継続していくために何かアドバイスをお願いします。

森下:これからは、NPO活動がたくさん増えてくると思います。地域の中に元気なお年寄りで、社会に役立ちたいという人がいっぱいいるわけです。私は、情報社会を推進していく上でも、やはり地域の自治会活動がこれから非常に重要になると思います。住民が選んだ自治会長が、自治体とのパイプ役になり、防災リーダーにもなる。市町村も、自治会の会長さんが非常に重要です。

他方、市町村はスリム化していかないといけない。少子高齢で人手がないわけですから。そうすると、住民に色々なことをやってもらわざるを得ない自治体もあります。そういう意味では、住民がやるべきことが増えてくるので、それを自治体がどう支援するか、情報ツールも要りますね。

田中:今は色々な社会的システムがありますが、バラバラです。宅配のシステム、寝たきりの老人の方の情報など、それぞれ目的に応じた情報システムですが、それらと地区防災で必要とされる業務を連携させ、組み込んでもらわなければなりません。これを特区でやらないと、いつまで経っても進まないのです。

筒井:特区に適当な場所はありますか?

田中:それは、強い危機感を持っている地域です。南海トラフ巨大地震、南関東首都直下地震の地域。自治体が問題意識をもって力を入れている、大学研究所も参画して研究をしている、企業の人々がBCP(事業継続計画)の視点で取り組んでいる所ですね。

今までは、縦方向の防災システム、情報連携の仕組みでした。今後は、横方向の情報連携と防災を作り込まなくてはいけません。これは多分、立体型になります。つまり地区単位がたくさんでき、多様な主体が2次元でなく3次元で連携しなくてはいけない。それにより強固にもなります。今、日本の防災システムの作り方は変わろうとしているし、変えなくてはいけない。変えるために特区を作りながらモデルを作り、さまざまなシステムを連携させ参画させる。情報ICTとして見ると、そこが誰でもいつでも使える日本としての情報ソフトウエアの格納庫になると思うのです。

筒井:なるほど。「地区防災計画」と情報の関係性はやはり深く、特区を作ることで、日本は新しい防災の時代に進んでいくと思います。また、それを国際的に発展させ発信する流れにしていくことも重要ですね。今日は、どうもありがとうございました。