2022/11/10
事例から学ぶ
コールセンター事業やバックオフィス事業を通じて企業の顧客サポート、事務処理サポートなどを行うりらいあコミュニケーションズ(東京都渋谷区、網野孝社長)。国内30カ所以上で約1万9000人の従業員がサービスに従事する。同社は2020年に対策を定め、災害時の一斉帰宅抑制に向けた取り組みを開始した。
記事中写真提供:りらいあコミュニケーションズ
りらいあコミュニケーションズ
東京都
※本記事は月刊BCPリーダーズvol.32(2022年11月号)に掲載したものです。
❶座席数の6割3日間を目標に備蓄品を確保
・東日本大震災を機に備蓄確保に取り組み、全国拠点の全座席数の6割が3日間滞在できる物資の備えを2年がかりで達成。経営層のあと押しが強まったことも達成要因。
❷備蓄内容を常にアップデートし実効性を高める
・被災経験や夜間滞在訓練を生かすとともに、女性の力を活用して備蓄品を常にアップデート。実際の被災時に本当に役立つかどうかを視点に、必要な備えを追求。
❸東京都の一斉帰宅抑制推進モデル企業に認定
・東京都の一斉帰宅抑制推進モデル企業に認定されたことで他社の目標となるだけでなく、顧客先の備蓄対策にも影響を与えるなど、業界への波及効果を生み出す。
経営層のあと押しで備蓄目標達成
りらいあコミュニケーションズは東京・渋谷の本社だけでなく、全国の支社・支店やほぼすべてのオペレーションセンターで、座席数の6割が3日間滞在できる備蓄品を確保している。総務部・部長の鈴島栄都子氏は「業務に繁忙期と閑散期があり、毎日全席フル稼働しているわけではないため、座席数の6割は決して低い数字ではない」と説明する。
コールセンターの運営やバックオフィス業務はニーズの変化が激しい特徴がある。例えば、企業がキャンペーン期間限定で短期の電話受付対応を依頼するケース。そのため座席数に対する備蓄品の割合は、6割で不足はない。ただし、防災リュックは全席の椅子に装備。ヘルメットや軍手、水、食料、携帯トイレなどを入れている。
同社が一斉帰宅抑制に向けて備蓄品の確保に動き出したのは2011年の東日本大震災がきっかけ。仙台市にあった当時の東北支店と仙台青葉センターの2拠点が被災した。合わせて約200席に約600人が勤務していたという。人的被害はなかったが、天井パネルの落下などが発生した。
翌2012年、政府は企業に3日間分の水、食料などの備蓄を求めるガイドラインを策定。首都直下地震を想定したもので、帰宅困難者数は東日本大震災の約1.5倍の517万人を見込んだ。また同じ年、東京都も企業に対して3日分の備蓄の努めを記した東京都帰宅困難者対策条例を制定した。
とはいえ、同社がそこでいきなり座席数の6割が3日間滞在できる物資の備えを実現できたわけではない。鈴島氏は「この備蓄目標を全国で達成するまでに約2年かかった」と振り返る。
「被災地は比較的スムーズに進みましたが、地震が少ない地域ではやはりオペレーションセンターの稼働が優先された。当初は『3割程度の備蓄なら可能』と答えるセンターもありました。6割備蓄が加速したのは、経営層からのあと押しが強まったから」と続ける。
総務部・総務室の有岡陸氏も「以前はいかに限られたスペースで売上を上げるかに軸足があった。今は考え方が変わり、従業員が安全に安心して働きやすい環境を意識しています。備蓄品の要望も裏付けがあれば通りやすくなりました」と話す。
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