2014/07/25
誌面情報 vol44
住民・事業者が街を守る
企業の地域貢献のあり方として、注目を集めているのが地区防災計画制度だ。今年4月に創設された制度で、市町村の一定の地区内の居住者および事業者が自発的な防災活動に関する計画(地区防災計画)を策定し、市町村が定める「地域防災計画」の中に取り入れられる仕組みを設けている。今号の特集でも、地域貢献の枠組みとして、地区防災計画制度の活用を模索している企業もあるが、始まったばかりの制度ということもあり、「地区の範囲をどのように定めたらいいか」「どのように計画を策定すればよいか」など、住民や事業者、行政側ともに、まだ同制度への疑問や戸惑いも多いようだ。事業者主体の事例ではないが、早くから地区防災の考え方を取り入れ、全国に先駆けて市内全域で地区ごとの防災計画を策定している北海道石狩市の取り組みを取材した。
住民主体で育てる地区防災
北海道石狩市
石狩市が地域防災計画の大幅な改定を最初に迫られたのは2005年にさかのぼる。「平成の市町村大合併」により、石狩市は隣接する厚田村・浜益村と合併。人口は1.1倍に、面積は6倍に増えた。
「面積が増えた分、旧石狩市には無かった山間部での土砂災害リスクが増えるなど、それまでの地域防災計画では対応できないことが分かった。それでも東日本大震災前は全面改定の予定はなく、現況に合わせた修正程度で考えていた」と石狩市総務部総務課危機管理担当主任の笠井剛氏は当時を振り返る。しかし2011年3月に東日本大震災が発生。当時の地域防災計画に危機感を感じた田岡克介市長は、「策定にあたっては、専門家から意見をもらい、地区住民自らが納得し、考えられる動機付けが必要」と考え、地区ごとの防災計画の必要性について市長と同じ考えを持つ当時北海道大学工学研究院特任教授の加賀屋誠一氏(現在・室蘭工業大学副学長)に助言を求めた。
加賀
屋氏は、2000年の有珠山噴火時に噴火を予知すると同時に近隣住民の避難を指示し、地元では「有珠山の守り神」とも呼ばれている元北海道大学附属地震火山研究観測センター長の岡田弘(ひろむ)教授(現・北海道大学名誉教授)に影響を受け、早い段階から地区防災に関してその有用性を熟知していた。加賀屋氏は2011年10月、「地区防災計画策定に係る市民参加のあり方に関する提言~地域防災力の強化に向けて~」と「地域防災計画・水防計画の改定に関する提言」をまとめ、市に提出。石狩市はこの提言に沿った地区防災計画を策定することを決定した。
提言には、これまでの地域防災計画から脱却し、想定外の規模の災害まで含め、住民一人ひとりが万が一に備えて普段から訓練や備蓄などの防災・減災活動を進め、自助・共助を促すことのほか、災害時のICS(インシデント・コマンド・システム※米国で導入されている災害対応の標準化された考え方)の導入、市のBCP(業務継続計画)の策定などが盛り込まれていた。
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