2020/07/15
知られていない感染病の脅威
日本におけるSFTS発生概況
日本国内での初発例として2013年に報告された山口県在住のSFTS患者から分離されたウイルスの遺伝子を解析したところ、中国のSFTS流行地域で分離されているウイルスとは異なっていました。
つまり、日本で最初に検出されたSFTSウイルスは、最近中国から侵入したのではなく、以前から日本国内には分布していたと考えられました。したがって、日本国内最初の患者は、日本国内で、元々国内に分布していたSFTSウイルスに感染したと解釈されています。
SFTS 患者の発生は、九州、四国、中国、関西地方を中心に報告されていますが、現在では、中部地方の一部、東京都まで拡大しています(図1)。本図には記載されていませんが、鳥取県内での発生も最近起きています。さらに、2020年6月には京都府北部での新たな発生も認められています。
2013年1月~20年5月27日までの感染症発生動向調査によれば、500名以上の罹患者が国内で確認されています。男女比はほぼ1:1で、届出時点の患者は60歳以上が多く、年齢中央値は74歳でした。発病の認められる時期は、例年5~8月が多いのですが、18年は16年と同様、10月まで発生数は減っていません(図2)。
一方、日本医療研究開発機構(AMED)研究班「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対する診断・治療・予防法の開発及びヒトへの感染リスクの解明等に関する研究」では、14年9月~17年10月に発病した患者133名の詳細な情報に基づいて、SFTSの疫学や臨床情報、予後(病気や病状がそのまま進むと、患者が将来どのようになるか、生存か死亡かを予測すること)に関わるリスク因子が解析されています。
研究対象となったSFTS患者133名中97名(73%)に合併症が認められています。その内訳は、高血圧(47名、35%)、糖尿病(27名、20%)、脂質代謝異常症(15名、11%)、悪性腫瘍(9名、7%)でした。死亡に至った患者は、悪性腫瘍の合併症事例が多かったようです。
また、109名(82%)は発病前2週間以内に屋外活動を行っており、うち70名(53%)は農作業に従事しています。研究期間中の全病例における死亡率は27%(死亡36名)と報告されています。
知られていない感染病の脅威の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方