また、DOT(米国運輸省)ではHazardous Materials:ハザーダス・マテリアルス=ハズマットを(危険物)9つのクラスに分類し、クラスの中に区分(ディビジョン)を設けており、「適切な取り扱い、貯蔵、製造、加工、梱包、使用、廃棄、または輸送が行わなければ生命・財産・環境へ著しくリスクをもたらす物質を含んだもの」と定義している。また、カナダではハズマットのことをDangerous goods:デンジャラス・グッズと呼んでいる。

※DOTおよび国連分類による危険物クラス=国際海事機関、国際民間航空機関、国内の船舶安全法、航空法などに広く採用されている

■テロリズムと大量破壊兵器

米国司法省ではテロリズムを「人々または財産に対し、非合法な力または暴力を使い政治的・社会的な目的のために、政府や民間人、その他のあらゆる組織を威嚇または強要する行為」と定義している。日本でも警察庁の組織令、自衛隊法、国民保護法、特定秘密保護法などでそれぞれテロに関する定義がされているが、共通している背景として冷戦時代が終わり国同士が軍隊を動員して戦うことが少なくなった半面、革命や内戦、少数民族の武力抗争や宗教過激派などによる紛争が絶え間なく続いており、不安定な状態が継続している。そのような不安定な状態がテロリストを駆り立て、規模を問わず、小さな組織や団体が国などの大きな権力を相手に戦いを仕掛けるようになった。そのような小さな組織や団体が体制にダメージを与えるためにはアンフェア(卑劣)な手段を用いて奇襲的に不意打ちを食らわさなければならない。それがテロリズムの本質である。 

オウム真理教による1994年の松本サリン事件、1995年の地下鉄サリン事件は我々の記憶の中に今でも鮮明に残っている。また、2001年9月11日、オサマ・ビンラディン率いるアルカイーダによるアメリカ同時多発テロ事件は世界中に大きな衝撃を与え、世界のテロに対する概念を大きく変えることになった。残念ながら、その後も世界ではテロによる破壊活動が後を絶たない。

■テロリストの目的とターゲット

テロリストの目的は一体何なのだろうか?代表的なものを5つ掲げる。

1.大量の死傷者を出すこと
2.資源の危機的喪失をもたらすこと
3.主要なサービスを破壊すること
4.経済を破壊すること
5.恐怖心を植付けること

これらの目的を1つあるいは2つ以上同時に達成するために、テロリストはどういう場所にターゲットを絞り、どのような武器を使用するのか検証してみよう。

<テロリストのターゲットになりやすい場所・施設>

下記に挙げる場所や施設に標的を定め攻撃することにより、テロリストは上記の目的を達成することが容易になる。

• 多くの人間が集まる公共の集会場所(劇場・デパート・競技場など)
• 公共施設(学校・役所など)
• 大規模な交通機関(駅・地下鉄・空港・航空機・橋・トンネル・新幹線など)
• 政治的、経済的に大きな打撃を与えられる場所(各省庁・政府関連施設・大企業本社・工場などサイバーテロ含む)
• 電気・ガス・水道など生活のインフラを支える施設または設備
• 通信・放送網(NTT、各民放放送局など)
• 歴史的、象徴的な意味を持つ場所(皇居前広場、有名な寺社など)
• 原子力発電所
• 危険物貯蔵施設(石油コンビナートやLNG施設など)
• 農場、食品流通網(アグロテロ)


さて、読者の皆様で上記のような場所には一切関係がないという人はいらっしゃらないはずである。つまりこのような施設や場所が身近な存在としてある人は、常にテロ災害の被害者あるいは第一発見者になる可能性が高くなることは理解していただけるだろう。よって一般市民、従業員へのテロ災害に対する教育訓練と準備が必須なのである!

【危険物/テロ災害の種類と特徴】

■テロリストの武器

一般的にテロリストが使用する武器を米国では「大量破壊兵器(WMD=Weapons of Mass Destruction)として」次の5つに分類している。

• Chemical:化学兵器
• Biological:生物兵器
• Radiological:放射性物質拡散兵器
• Nuclear:核兵器
• Explosive:爆発物

それぞれの英語の頭文字を取って通称CBRNE(シーバーン)と呼ばれ認識されている。日本ではNBC災害とか特殊災害という表現を用いていることを追記しておく。