■ ある介護施設を運営する日系企業のローカライズ事例

さて、中国も日本に負けず劣らずの高齢化社会となりつつあります。これからは、高齢者を相手にしたビジネスも発展するとみられています。

これまでの中国の発展を下支えしていた方々もすでに多くが高齢者となり、人口に大きなウエイトを占めるようになりました。中国は日本に比べリタイヤの年齢が早いこともあり、今もなお元気な60~50代の人々は孫の世話ばかりでなく、海外旅行や趣味、運動などに時間を使うことが多くなっています。

つまり今後10~20年の間に、今まさに介護が必要な人たちと介護予備軍と見られる人たちによる介護市場の拡大が間違いなく訪れることになります。そうしたことも手伝って、日本の進んだ介護技術を中国に導入しようという試みが、すでにいろいろな方面で始まっております。

しかし、それらすべてがうまくいっているわけではありません。あるフランス大手が、自ら投資し土地を購入し施設を建て経営を行おうとしましたが、うまくいかずに結局撤退。二度と中国には投資しないという決断を下したことが知られています。

何が問題だったのか? それは中国という社会が「介護」に対してどういうニーズを持っているのかをしっかり把握できず、ミスマッチだったからです。

まず、中国の人口構造をよくよく知っておく必要がありました。14億もの人口を抱えているため、都市と地方の経済的な格差、文化的な差異、住環境・生活習慣の差異などが、他国と比べると大きいのです。

例えば、80~90代後期高齢者は昔から貧しい生活に慣れているため、お金を払ってサービスを受けることに躊躇します。60~70代の高齢者は一人っ子政策時代の親であるため、子供に(経済的な)面倒を見てもらうことなど最初から諦めています。またそれ以下の40~50代の介護予備軍は現代的な生活に慣れ親しんでいるため、自分たちが高齢者と言われる年代になったときにどうしたいかをよりオープンな発想で準備しているといえます。

そのため「後期高齢者の介護」といっても、果たして誰がお金を出し、どのようなレベルを求めているのかが、非常に複雑です。この難題に安易な回答は存在しません。