平成16年7月の新潟豪雨とその教訓
<7.13 新潟豪雨洪水災害調査委員会>の「報告書」が分析する問題点
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2018/07/30
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
14年前の平成16年(2004)夏、新潟県のほぼ全域を襲った豪雨と大水害の被害は、多くの問題点を今日の水害対策に提起している。土木学会「報告書」が指摘するところによれば、4つの問題点が浮き彫りにされた。
(1)前線に沿う地域に6時間から24時間の間に大量の降雨、各河川にて戦後最高水位を記録したこと。
(2)氾濫発生場所は、中小規模の都市であり、都市型水害と農村型水害の中間的なものであったこと。
(3)破堤は、堤防越水による裏法面(うらのりめん)が侵食による弱体化が主たる原因とみられること。
(4)死者15人中12人が65歳以上の高齢者であり、急激な浸水により避難が間に合わなかった。水害に対する高齢者対策や避難勧告発令基準等が課題となったこと。
この大水害については、平成17年(2005)5月に公表された「7.13新潟豪雨洪水災害調査委員会」(新潟県)が明快な状況分析や今後の課題を提示しており、レベルの高い同「報告書」から適宜引用したい。
平成16年7月13 日に未曾有の豪雨により、新潟県内の五十嵐川・刈谷田川で発生した洪水による破堤で三条市や中之島町などで大きな被害が発生した.新潟県は「7.13 新潟豪雨洪水災害調査委員会」(委員長・玉井信行氏、金沢大学大学院自然科学研究科社会基盤工学専攻教授)を組織し、今後の再発防止策を検討するために破堤のメカニズムの検討や洪水発生に関する技術的な検討を行った。
「報告書」は、計3回の委員会での審議結果を踏まえ、特に堤防の破堤による被害の大きかった一級河川五十嵐川(諏訪地区)及び刈谷田川(中之島地区)の堤防の破堤メカニズムや新潟県の今後の堤防整備のあり方等を取りまとめたものである。
問題点1:前線に沿う地域に6~24時間の間に大量の降雨、各河川にて戦後最高水位を記録した。
日本海から新潟県・福島県付近にかけて停滞した梅雨前線に、東日本から西日本を覆った太平洋高気圧の縁にそって流れ込んだ暖かく湿った空気により前線が活発化し、平成16年7月12 日の夜半から13 日にかけて大雨となり、特に13 日未明から昼過ぎにかけて長岡市や三条市などの中越地方を中心に豪雨となった。
この豪雨で13日の日降水量は、気象庁の栃尾観測所で昭和10年(1935)以降の雨量観測データとして最も多かった昭和36年(1961)の年最大日雨量の342mmを大きく上回る421mmを記録した。守門岳で356mm、宮寄上で316mmとなるなど各地で記録的な豪雨となった。
栃尾観測所における7月の平均降水量は、243mmであることから、今回観測した日降水量421mmは、月平均降水量の約2カ月分に相当する雨が、わずか1日の間に降ったことになる。
問題点2:氾濫発生場所は、中小規模の都市であり、都市型水害と農村型水害の中間的なものだった。
今回の豪雨で新潟県が管理する河川では、三条市を流れる一級河川五十嵐川や見附市、中之島町を流れる刈谷田川をはじめとして6河川11 箇所の堤防の破堤等により、中越地方を中心に各地で浸水被害が相次いで発生した。避難勧告や避難指示が出されたにもかかわらず、新潟県全体で死者15人、重軽傷者3人、全壊家屋70棟、床上浸水2178棟、床下浸水6117棟にのぼる甚大な被害となった。避難指示のあり方が改めて問題となった。
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