2022/04/05
ウクライナ危機、安全保障、経済活動
世界が激震するいま、
経済安全保障の要点
明星大学経営学部教授 細川昌彦氏に聞く
1955年生まれ、大阪府出身。東京大学法学部卒業、ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。77年旧通商産業省入省、 85年出向により山形県警本部警務部長、98年旧通産省通商政策局米州課長、2001年スタンフォード大学客員研究員、02年経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長、03年中部経済産業局長、04年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長、06年経済産業省退職。その後、中京大学経済学部教授、中部大学中部高等学術研究所教授を経て、20年から明星大学経営学部教授。
経済を武器化する中国、強力に対立する米国、ウクライナ危機がもたらす影響、日本企業がとるべき対策は
ロシア軍がウクライナに侵攻した翌日の2月25日、日本では「経済安全保障推進法案」が閣議決定され、通常国会に提出された。経済安全保障とはそもそも何か、なぜ法制化されようとしているのか、日本企業はどう対応すべきか――。元経済産業省(旧通産省)官僚で現在の安全保障貿易管理課の設立に携わった経験を持つ、明星大学経営学部の細川昌彦教授に聞いた。
日本の経済安全保障が対象とする脅威は明確に中国
――ウクライナ危機のいま、経済安全保障の議論が活発化しています。背景には何があるのでしょうか?
ウクライナ危機も含め、中国という大国の存在を意識しなければ、日本の安全保障にとって何が脅威なのかを適切にとらえることはできません。
まず、法案が国会審議に入った経済安全保障ですが、政府が特定国を念頭に置いていないというのはあくまで表向き。脅威の対象を明確にしないと安全保障になりませんから、この場合の対象は明らかに中国です。
中国はこの10年、他国への経済制裁を何度も行ってきました。日本に対しても2010年、尖閣問題を機にレアアースを禁輸。その後も各国に制裁を発動し、最近は新型コロナ発生源の独自調査を主張したオーストラリアから石炭などの輸入を制限しています。巨大な市場を強みに、政治的に対立する相手に経済圧力をかける。外交手段として経済を武器化し、あたり前に行使してきているのです。
一方、こうした中国の動きと並行して、量子コンピューターやAI(人工知能)といった新興技術の重要度が急速に上がってきた。なぜなら、それらは軍事用途と結び付いたとき、国家間の勢力図を一変させるゲームチェンジャーの可能性を秘めているからです。そこをいま、アメリカと中国が必死に押さえようとしている。いわゆる米中技術覇権争いです。
半導体一つとっても、自給を急ぐ中国に対し、アメリカ、またヨーロッパも、それこそ10 兆円規模の予算を投資して自国に産業を囲い込もうとしている。日本も早急に手を打たないと、国の存立を危うくしかねません。
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