先輩ママ・パパに学ぶ「防災術」
アレルギーの子、発達障害の子、赤ちゃんを、災害時にどう守る?
時東 ぁみ
防災士資格の取得(2007年)をきっかけに防災をより身近なものにするべく、エンタメの要素を取り入れながら楽しく伝える活動を展開。防災をテーマにしたラジオ番組やイベントなどに多数出演。上級救命技能、ペット災害危機管理士3級など防災・危機管理に関する資格多数。
2022/02/07
時東ぁみの「防災やってみよっ!」
時東 ぁみ
防災士資格の取得(2007年)をきっかけに防災をより身近なものにするべく、エンタメの要素を取り入れながら楽しく伝える活動を展開。防災をテーマにしたラジオ番組やイベントなどに多数出演。上級救命技能、ペット災害危機管理士3級など防災・危機管理に関する資格多数。
昨年、妊娠が判明して以降、私の生活は大きく変わりました。なかでも変わったのが災害に対する意識です。これまでは、自分や夫だけで避難する前提でいました。けれど子供ができてからは「妊娠している状態でどうやって避難するのか」「出産後、赤ちゃんと一緒に避難するにはどうすればいいのか」と考えるようになったのです。
自分では何もできない乳幼児、アレルギーを持つ子供、発達障害を持つ子供……ひとくちに「子供」といっても災害時に必要とする支援はさまざまです。そんな子供を守るには、日頃どう備え、被災時にどう動けばいいのでしょうか。そこで急遽、オンライン会議を開催することに。防災に詳しい先輩ママ・パパ4人に話を聞いてみましょう!
時東ぁみ(以下、時東):昨年10月に発表したとおり、現在、私は妊娠中です。子供ができてからは、今までとは異なる心構えで災害に臨む必要があると感じるようになりました。そこで、今日は先輩ママ・パパであるみなさんにお話を聞きたいと思っています。よろしくお願いします!
一同:よろしくお願いします!
時東:まずお一人ずつ、簡単に自己紹介をお願いしてもいいですか?
海野美和(以下、海野):海野です。私は「NPO法人子育ての輪Lei 」を設立し、子育てのためのコミュニティ事業や子育て世代のための防災イベントなどを行っています。家には4人の子供たちがいて、上から小学校5年生、3年生、4歳、3歳です。
時東:4人も!? 大家族ですね。
海野:はい。私の場合、いちばん上の子が生まれてからわずか2週間で東日本大震災が起こったんです。幸い、神奈川県西部に住んでいるので、そこまで大きな揺れではありませんでした。けれど、災害関連の仕事をする夫が忙しくなり、震災から1週間は、生まれたばかりの子供と2人きり。どうしたらいいのかわからず、本当に不安な毎日でしたね。とくに不安だったのが、私が住んでいた地域で計画停電があった時。電気が止まると、ミルクも作れなくなってしまいました。
時東:生後2週間の赤ちゃんと2人きり、しかも計画停電まで……。その不安な日々を、どのようにして乗り越えたのでしょうか?
海野:向かいの家の方がすごく心配してくれたんです。「大丈夫なの?」「ミルクとか作れてる?」「夜ちゃんと寝られてる?」って。それが心の支えでしたね。災害が落ち着いてからは自治会に入り、近所の人たちと交流を持つようになりました。そして、子育て世代のネットワークをつくるため、自分でNPOを立ち上げたんです。
岡雅仁(以下、岡パパ):「食物アレルギー体験レポーター岡夫婦」の岡パパです。私たちは、食物アレルギーに関する情報発信や非常食の試食といった活動をしています。防災への意識が高まったきっかけは、私たちも3.11でした。当時は妻が妊娠中だったんです。
岡真美(以下、岡ママ):地震が起きた時、私は妊婦健診で病院にいました。行きは電車だったけれど、帰りは止まってしまい、大混雑のバスの列に並びながら、夫に「迎えにきてほしい」と電話しました。夕方には家に帰っている予定だったのに、ようやく帰宅した頃には夜の12時を回っていましたね。
時東:妊婦の場合、混雑する乗り物に乗るのもリスクだし、夜に出歩くのも不安ですよね。
岡ママ:そうですね。当日はたまたま夫と電話が通じたので、迎えに来てもらえました。けれど、災害時には電話が繋がらない場合もありますよね。今から振り返ると、非常時の連絡手段や電車が止まった場合の帰宅経路を確認しておくべきだったと反省しています。
岡パパ:当時は防災に対する意識が皆無で、非常食も用意しておらず、家にあった食料でなんとかしのぎました。それで「このままではまずい」と思って、少し状況が落ち着いてから非常食を購入したんです。
けれども、子供が生まれると、小麦や卵の食物アレルギーがあるとわかりました。当時買い込んでいた非常食には、クッキーや乾パンなど、小麦を含む食品が多数ありました。そこで、「うちの子供でも食べられる防災食ってなんだろう?」と情報を集めていったのが、現在の活動を始めたきっかけです。2012〜2013年頃のことですね。
時東:東日本大震災当時は、アルファ化米が今ほど普及していなくて、乾パンが防災食の代表でしたもんね。
村田愛(以下、村田):村田です。私も「アレルギーっ子の旅する情報局CAT」という組織を作り、アレルギーの子供を持つ親のための情報発信をしています。うちの長男には卵や小麦などのアレルギーがあります。ある時、自治体が配布した防災セットの非常食を見てみると、うちの子は食べられないことに気づきました。「自治体から配られている防災食なのに、ぜんぜん食べられないじゃん!!」って。そこで「この子が食べられる非常食ってなんだろう」と、非常食とアレルギーの関係を意識するようになっていきました。
長男はアレルギーの他に発達障害も抱えていて、何回同じことを言っても覚えてくれません。だから非常時がとても心配で、発達障害のための対策も行っています。
時東ぁみの「防災やってみよっ!」の他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方