リスク対策.comは、感染拡大を続ける新型肺炎への企業など組織の対応状況を明らかにするため、1月27日から31日にかけて緊急アンケート調査を実施した。その結果、従業員に対するマスク着用や手洗い、手指消毒など感染予防の呼びかけは多くの組織で行われているものの、徹底までできている会社は3割弱、さらに、社内に感染者が発生、あるいは感染が拡大した際の対応計画の策定については、実施・徹底している組織は一部にとどまることが明らかになった。新型肺炎は、健康被害だけでなく、今後、企業の業績、さらには世界経済にも大きな影響を及ぼすことが懸念されている。感染防止策と併せてBCPの見直しが求められそうだ。

アンケートの対象は、リスク対策.comのメールマガジン購読者で、組織の総務またはBCPに携わる人とし計363の回答を得た。このうち、個人事業者や、同一組織からの重複回答、組織名が未記入の回答などを除き、355を有効回答として分析した。なお、本アンケートは、兵庫県立大学の木村玲欧教授に監修を依頼した。

回答者の所属組織(以下、回答組織)の規模は500人以上が約半数を占め、業種別では製造業が最も多かった。回答組織のBCPの策定状況は「BCPを策定しておらず、策定する予定もない」とした組織が4%で、大半がすでにBCPを策定しているとした。

これまでの感染症対策(新型肺炎に限らず)

アンケートではまず、新型肺炎に限らず、インフルエンザや麻疹(はしか)など、従来からの感染症への対策についての取り組みを、項目ごとに4段階の実行レベル(1:特に何も考えていない、2:実施をしようと思っているが現時点では何もやっていない、3:実施しているが徹底できていない、4:徹底して実施している)で評価してもらった。これらの項目は、中小企業庁(2009)「新型インフルエンザA(H1N1)対策のための事業継続計画」、東京商工会議所(2009)「中小企業のための新型インフルエンザ対策ガイドライン~命を守り、倒産をまぬがれるために~」、厚生労働省(2009)「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」などを参考に、新型肺炎でも同様に求められそうな項目をまとめた。

【質問】従業員への対策

1.従業員や家族への正しい予防策の教育
2.マスク着用・咳エチケットの呼びかけ
3.手洗い、手指消毒、うがいの励行
4.感染した可能性がある場合の医療機関への事前連絡
5.感染した場合の職場への連絡の徹底
6.感染拡大時における出勤前の体温測定

画像を拡大 グラフ1. 従業員への対策(4段階評価・平均値)
画像を拡大 グラフ2. 従業員への対策(詳細)
 
 

グラフ1が示す通り、「感染拡大時における出勤前の体温測定」を除き、全体に取り組みが進んでいる傾向が明らかになった。ただし、グラフ2の回答詳細を見ると、「従業員や家族への正しい予防策の教育」「マスク着用・咳エチケットの呼びかけ」「手洗い、手指消毒、うがいの励行」については、「実施しているが徹底できていない」との回答が高く、課題もあることをうかがわせる結果となった。

「感染した可能性がある場合の事前の医療機関への連絡および速やかな受診の呼びかけ」については、感染拡大防止のため、通常のインフルエンザなどでも推奨されている。一方、新型肺炎について、厚生労働省では「湖北省に滞在していて、帰国後2週間の間に発熱や呼吸器症状がある場合には、マスクを着用するなどの咳エチケットを実施の上、あらかじめ保健所に連絡の上、速やかに医療機関を受診すること」と、医療機関に行く前に保険所に連絡をすることを呼び掛けている。なお、受診に当たっては、湖北省への滞在歴があることを申告する必要がある。

「感染拡大時における出勤前の体温測定」については、徹底しているとの企業は14%にとどまる。今後、新型肺炎の感染拡大を考えれば、検討はしておいた方がいい。ただし、強制までは難しいため、就業規則なども併せて見直しておくことも大切だ。