2020/01/06
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
「警報」や「警報級」の意味とは?
少し話はそれますが、皆さんの中にはひょっとしたら「警報級の可能性を把握することに一体どんな意味があるのか?」と思われている方がいるかもしれません。「警報ですら意思決定にどう生かせばいいのか分からず持て余し気味なのに、警報級の可能性という情報があると言われても、本当に使える情報だろうか?」といった疑問もあることでしょう。
そもそも「警報」は「重大な災害が起こる恐れのあるときに警戒を呼び掛けて行う予報」(気象庁)です。しかし「重大な災害とは何か?」ということが気象機関や自治体から伝えられることは皆無であるため「いまいちピンとこない」というのが実態ではないでしょうか?
気象庁は、各自治体で過去何十年かの間に発生した災害を事細かに分析した上で警報の発表基準を作成しています。例えば次の「基準値の算出方法(散布図の利用)」という図は、大雨警報(浸水害)の基準を定める際の分析を示したものです。
グラフ上に示されているのが対象となる自治体で発生した過去の災害事例です。縦軸は表面雨量指数と呼ばれるもの、横軸は平坦地の短時間雨量で、浸水害が発生した場合(○もしくは△)と発生しなかった場合(×)に分けて表現されています。

オレンジ色、赤色、青紫色の横線に注目してみてください。該当する自治体で浸水被害が起こり始めるあたりにオレンジ色の注意報基準が引かれ、床上・床下浸水の事例が起こり始めた最低ラインのところに赤色の警報基準の閾値(基準II)が設定されています。なお、警報基準を超えた事例には床上・床下浸水が一桁のケースもあれば、数十から数百のケースまで幅があります。そのため、より規模の大きな災害をカバーしていく目的で青紫色の基準IIIの閾値が引かれています。
この図を見ながら改めて「重大な災害が起こる恐れ」という警報の定義を思い出してみてください。警報とは「その地域で中規模から大規模な災害が起こった時と同じ状況が見込まれるため、特に警戒してほしいことを伝える情報」に他なりません。
警報が発表された時には「また警報か」ではなく、過去に起こった何らかの災害に匹敵する可能性があると、ぜひ受け止めてほしいと思います。早期注意情報が伝える「警報級の可能性」についても同じです。今後この地域で何らかの災害が起こり得るかもしれないと受け止め、早期の判断に生かしてみてください。
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方