2019/12/06
日本企業が失敗する新チャイナ・リスク
■ ISOは取得しているが…
環境対策面でさまざまに苦労をしている日系企業の担当者に会って打ち合わせをするとよく耳にするのが「弊社は、ISO14001(環境マネジメントシステム)も取得しているから安心していたのですが…」という言葉です。さらに、この言葉の後に出てくる不満があり、「しっかりISO対策もやっているのに、なぜ中国ではそれでは済まないのだろうか?」というぼやきなのです。
実は中国政府はもうすでに、ISO規格を上回るGB規格を国際的なスタンダードにしていこうという野心を持っていて、民間企業への要求も世界の主要国家よりも厳しいものとなっています。他国ではまだ取り入れられていないものも自主的に対応しようとしており、先を急ごうと躍起になっている事情があるのです。
つまり、現在の中米の経済摩擦の背景には、中国のこのようなスタンダード奪取の覇権争いという面も潜んでいたのです。実際に、通信規格の5G規格においてはHuawei(ファーウェイ、華為)が猛烈なスピードで発展し、このままでは世界での大きなシェアを取ることで、GB規格が世界の規格となってしまう恐れがあることより、西欧世界は一丸となって中国の台頭を拒んでいるという図式が見え隠れしています。
このような経緯より、これまで主に産業革命以降の西欧文明に寄り添ってきた日本の企業にとって、中国での事業を行うに当たり最近になって表面化してきたのが、変化の早いGB規格への適応障害なのです。
中国でも一般的に、日本の環境対策技術やノウハウは素晴らしいと評価されています。弊社へも多くの自治体や民間企業から、日本の技術を紹介してほしいとの問い合わせが多く寄せられます。それだけ、公害問題を乗り越えてきた日本への信頼が高いのです。
ところが、実際に中国で事業を行っている日系企業の環境対策は、決してほめられたものではありません。今もなお、毎月のように環境関連条例や法令に違反して罰則を受ける日系企業が後を絶たないのですが、よくよくその原因を突き詰めてみるとここに理由があったのです。
日本の工場で環境対策を任せられ、長年工務部で活躍したスタッフの方が中国の現地法人の環境対策顧問として送られて来ますが、こちらに来て中国の法令、条例、基準値など詳しい状況を知れば知るほど対応に苦慮するということがよくあるのです。
中国政府が求める基準、つまりGB規格が日本のそれと細かい部分で異なるばかりか、要求される基準がさらに上を行っているなどの事実が発覚することにより、対応が進まないということが起きてしまっております。
今後このような現象はさらにひどくなることと思われます。なぜなら、日系企業の変化に対する適応能力は一般的にさほど高くないからです。毎日のように変化する規格や基準、そして法令や法規の改定に合わせることはもちろん、変化を先取りし対策を取るというような取り組みがなされないと、いつまで経っても後手後手、受け身の対応となることが事業の発展を妨げてしまう要因になり得ます。
中国の発展のスピードは目を見張るものがありますが、その背後には企業への対応要求もそれだけ変化しており、早急に適応する能力を培っていかなければならない時代に突入したことを肝に銘じてください。
今後の中米の経済摩擦が、世界の技術覇権争いへも展開していくことでしょう。中国政府の要求にいち早く対応し、先を走るくらいの勢いが欲しいものです。
(了)
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