写真を拡大 プリンスエドワード島はカナダ東部の島(出典:グーグルマップ)

嵐への備え

PEIはニューヨークの近くで東海岸に位置するので、ハリケーン・ドリアンの影響は大丈夫かなと思い知人に連絡をとりました。

ドリアンは、PEIに接近するまえに、最大風速(1分間持続)が時速295キロ(カナダは時速表記なんですね)に達し、バハマで史上最悪の被害をもたらしました。そんな巨大ハリケーンが勢力を弱めながらもPEIに接近するということで、ハリケーン前から食料調達や家の周りの片付けなど準備に追われたということでした。

PEIでの主なハリケーン被害は、2003年のジュアンによるものがあります。その時は、最大風速が時速83キロであるにもかかわらず大きな被害が出ています。そのため、今回は事前に備える人も多かったそうです。通常、PEIの自然災害といえば、ハリケーンの他に、ウインターストームがあり、後者の方が一般的です。ですので、人々の意識は、雪、風、氷に向けられがちですなのですが、今回は特に強い風と激しい雨が懸念されたとのことです。

PEIの冬。冬は平均でもマイナス12度で寒い日にはマイナス20度以下にもなる。犬が庭を駆け回るのは日本と同じ。猫は暖房の効いた部屋にいる

ドリアンは結局、PEI近隣のノバスコシア州に上陸し、その猛威を見せつけ、温帯性低気圧に変わった後も、時速100キロ超という最大風速を維持しながら北上したため、PEIでは電力と通信網が大きなダメージを受けたそうです。

ちなみにPEIでは、ガスは都市ガスのシステムがなく、プロパンガスも一部を除いてほとんど普及していません。調理、ボイラーは電気を使用しているので、電気が止まれば調理ができなくなる家が多くなります。

一般的に、PEIでは時速80キロを超える強い風が吹けば、ほぼ毎回停電する傾向にあるようです。ただ、その場合、停電は瞬間的で、長くても数時間もすれば回復しています。ところが、今回は広範囲にわたって長時間の停電、通信の遮断が発生しました。比較的市街地に近い場所でも停電は30時間ほど続き、郊外になると最長で回復に6日間を要しています。

この、PEIでの長期にわたる停電の原因は、緩んだ地盤と強風による大木の倒木によって電線や電柱にダメージを与えた事と考えられているようです。また、被害が広範囲に及んだことで、通常よりも復旧に時間を要したようです。状況としては、日本の台風15号の被害と似ていますね(ちなみに台風15号最大瞬間風速58メートルなので、時速にすると208キロでした)。

今回は、北海道のように普段から涼しいPEIでの夏の停電ということで、市街地周辺の不便さは冷凍冷蔵庫が使えなくなるぐらいでしたが、郊外では、少し深刻な状態になります。上下水道が整備されていない地域では電動ポンプによって地下水を汲み上げ、下水は裏庭の地中に埋設されたタンクから定期的に下水処理システム(自然拡散)に排出せねばならないからです。そのため、そのような地域では自家用発電機の備え付けが推奨されているとのことです。

さらにもしこの停電が真冬に起こったらもっと大変なことになります。PEIの冬はマイナス20度以下になることもしばしばです。カナダの家は断熱保温効果があるファイバーや高密度スチロールで壁や天井が覆われています。それでも最近の暖房システムは電気に頼るものが多く、ヒートポンプや電気式ボイラーなどは単体で1万5000W(ワット)以上の電力が必要になっているので、断熱保温効果維持には限界があります。そこでそれらを主な暖房源としている場合には、予備の暖房手段を確保することが求められます。当然、実施するかどうかは、個人の自由です。

PEIで滑らないように砂をまくトラック

予備暖房として、電気に頼らないシステムであれば薪ストーブ、暖炉、石油ストーブなどがあげられますが、薪は少量では調達しにくく、ストーブの設置や掃除、手入れなどに手間がかかることから敬遠されがちで、一方石油ストーブは、灯油がリットルあたり360円以上と高いので、ほとんど利用されていません。そこで注目されるのは自家用発電機です。

PEIでは、地方の停電対策として推奨されていることもあり、発電機は、ホームセンターでも一般的に販売されています。

ちょうど、千葉県君津市で台風後に講演した際も、多くのママたちから、発電機を購入しようと思うという声がありました。ですので、いったいPEI でどのように発電機が販売されているんだろうと思った写真を送ってもらいました。そうすると、いくつか驚きポイントが出てきたので、みなさんと共有したいです。