【巻頭言】10年間の取材で学んだBCPで本当に大切なこと (前編)
心に残る災害を振り返る
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
2017/01/06
誌面情報 vol58
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
さて、2007年というのは、阪神・淡路大震災から12年目にあたる年でした。今思えば10 年の節目で創刊していれば良かったと思うのですが、当時は亥年は災害が多いと言われており、干支の節目に、防災や危機管理のコンテンツを発信していく媒体を立ち上げたかったというのが創刊の1つ目の理由です。
1995年は阪神・淡路大震災に加え、3月には地下鉄サリン事件がありました。1983年は日本海中部地震、もう少し遡ると1959年は伊勢湾台風、もっと前だと1923年が関東大震災、1707年は宝永の大噴火があった年です。いずれも歴史に残る大きな災害ばかり。
そう考えると、東日本大震災以降は毎年のように自然災害で多くの命が失われており、「亥年の悪夢」どころか、毎年何かが起きる異常な時代に突入してしまったのかもしれません。
読者の皆様からは「もともと御社は防災や危機管理の知識があったのか」とよく聞かれますが、ありません。私もリスク対策.comも、読者や取材させていただいた皆様に育てていただいたと心から感謝しております。
ただし、新建新聞社という会社は、もともと建設を通じて、社会のために貢献することを企業理念に据えており、特に1995年の阪神・淡路大震災以降は、建設や街づくりにおける防災対策に力を入れて取材をしてきました。
一方で、建物や構造物だけで人々や組織の安全を守ることができないということが認識されてきたのも、この頃からではないかと思います。つまり、被災して建物が使えなくなっても事業が継続できるようにするBCP(Business Continuity Plan)やレジリエンス(被災してもしなやかに回復する)といった考え方が、ちょうど世の中に広がり始めた時期でもありました。
2つ目の理由は、リスク対策.comを創刊する前、私は、わが社の新しいプロジェクトとして、全国の地域活性化の取り組みを取材させていただいていた時期があるのですが、活性化している地域というのは、当然、少子高齢化や産業の衰退、あるいは地域経済の衰退、中心市街地の衰退など、さまざまな危機を乗り越えて活性化しているのですが、この危機が活性化につながるプロセスをうまく応用することができれば、防災活動などを通じて地域や企業を元気にすることができるのではないかと考えたことがあります。
地域が危機に直面した時、あるリーダーのもとで、住民一人ひとりが危機感を認識し、地域全体が目指すべき新たな“まち”の姿を共有し、その目標に向かって、団結して取り組めるようになることで地域全体のブランド力が高まっていくというのが、私の考える地域活性化のプロセスです。そのプロセスは、防災活動、あるいは企業に置き換えるならBCP活動ともよく似ています。大切なことは、危機に直面していること、あるいは直面するだろうことを、どれだけの人が認識しているのか、同じベクトルに向かって協力して取り組んでいけるかだと思うのです。
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