2015/07/10
C+Bousai vol3
地区防災計画モデル地区フォーラム
自主防災会には中学生と高校生による災害時生活援助隊「ジュニアレスキュー隊」がある。高層マンションというのは、大災害が起こったときには停電でエレベーターが動かなくなるため、高層難民が大勢発生する。そういう高層難民の世帯に生活物資を届ける役割を負っている。
また、全309世帯を11班の避難誘導班に区分している。居住者台帳という仕組みを2005年に作り、災害時要援護者情報は100%把握している。世帯別、個人別に生年月日、性別、血液型、既往症、常用薬、掛かりつけの医療機関と診療科目、担当医、自力避難に支障ある理由、帰宅困難者に該当するかどうか、帰宅困難になった場合の主な滞在地などを居住者が自己申告するシステムである。2015年2月現在で住民の96%がこの台帳を提出している。
ソフィアステイシアの地区防災計画の特徴は、当地で起こり得る固有の災害を具体的にイメージして作っている点である。自然防災だけではなく、発災直後の初動対応から応急対応、在宅避難生活の継続、そしてマンションの復旧・復興までを視野に入れた実践的な防災計画となっている。マンション管理規約集を全面改正して、災害即応型とした。また、意思決定・予算執行の権限を明確化した。というのは、管理組合理事長が外出先で被災して帰宅困難になってしまった場合、意思決定権限が発揮できない。当然、こういう大きな被害を受けた時には、管理組合の総会も自治会も開けない。そういうときにマンションの緊急復旧をやるときの意思決定の方法や予算執行、どういうことをやるかというのを、この管理規約集を改正して明確化している。
防災訓練は、毎年テーマを変え、具体的な災害が発生したら、どのような災害がマンションを襲い、どのような被害が発生する恐れがあるかということを具体的にシミュレーションした上で行われる。シミュレーションのシナリオは大体4カ月かけて準備する。負傷者の救助、初期消火、高層階への一斉避難、災害時要援護者の担架搬送、高層階バルコニーからのハシゴ車救助、避難ハッチの脱出訓練、AEDの応急救護などを実施する。
毎年、避難誘導班ごとに防災講習会もやっている。直近では「災害イマジネーショントレーニング」講習会を開いた。災害が起きた直後、大体10 秒~ 15秒間くらいのとっさの行動で、その人が死んでしまうか、生き延びることができるかが分かれてしまう。今回は、「ある日突然首都直下地震が発生した!」という想定で、その時に居た場所、その時の行動を前提として、災害で死なないためにはどう行動したらいいかということを具体的に訓練した。
『ソフィアステイシア危機管理マニュアル』はマンションの全世帯に配布し、毎年住民交流会のテキストとして使っている。危険予知と危機回避、被害の最小化の方法について具体的に記述している。
C+Bousai vol3の他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方