■ライフラインの用途に優先順位をつける

2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、大規模停電によって多くの企業に影響が出た。停電の影響は一時295万戸に及び、1995年の阪神・淡路大震災の260万戸を上回る規模で、広い範囲で社会・経済活動が混乱したと言われている。サッポロビール北海道工場などは、建物や人的な被害は免れたが、停電により製造ラインの停止を余儀なくされた。

このように、電気をはじめとするライフラインの停止は事業に深刻な影響を与える可能性がある。万一供給がストップした際にいつまで業務を止めていられるか、あるいは必要最低限のライフラインをどこから確保するか、そしてどの用途から順に利用するかをあらかじめ可視化しておくことが必要だ。ここでは次の3つについて説明する。

(1)電気
事業者、とくに製造業にとってこれは心臓または血液に相当する。長時間の停電により、どの業務にどの程度の影響が出るかを紙に書き出して可視化しておくとよいだろう。影響の大きさをランク付けし、最も重要な業務については、「停電でも可能な作業または作業方法はないか」を、サーバーやパソコンについては「UPS(無停電電源装置)や発電機の設置」などを検討するとよい。
(2)水道
標準的なオフィスでは水道の寸断による業務や社内活動への影響は小さいと考えがちだが、サーバー室の冷却ができない、トイレが使えない(停電の影響による)など思わぬところで深刻な影響が出ることがある。これも影響の大きさを重み付けし、それぞれに必要な対策を講じよう。
(3)輸送・道路
災害時は輸送機能がマヒすることは避けられない。これまでの災害では車両やドライバー、燃料の不足、あるいは鉄道の寸断、道路の大渋滞などが繰り返し起こっている。主要道路の封鎖が発生した場合を想定して複数の代替ルート(陸路・海路・空路など可能な限りのオプションをリストアップ)を決めておくことなどが必要である。

(つづく)