2019/04/18
昆正和のBCP研究室
■ライフラインの用途に優先順位をつける
2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、大規模停電によって多くの企業に影響が出た。停電の影響は一時295万戸に及び、1995年の阪神・淡路大震災の260万戸を上回る規模で、広い範囲で社会・経済活動が混乱したと言われている。サッポロビール北海道工場などは、建物や人的な被害は免れたが、停電により製造ラインの停止を余儀なくされた。
このように、電気をはじめとするライフラインの停止は事業に深刻な影響を与える可能性がある。万一供給がストップした際にいつまで業務を止めていられるか、あるいは必要最低限のライフラインをどこから確保するか、そしてどの用途から順に利用するかをあらかじめ可視化しておくことが必要だ。ここでは次の3つについて説明する。
事業者、とくに製造業にとってこれは心臓または血液に相当する。長時間の停電により、どの業務にどの程度の影響が出るかを紙に書き出して可視化しておくとよいだろう。影響の大きさをランク付けし、最も重要な業務については、「停電でも可能な作業または作業方法はないか」を、サーバーやパソコンについては「UPS(無停電電源装置)や発電機の設置」などを検討するとよい。
(2)水道
標準的なオフィスでは水道の寸断による業務や社内活動への影響は小さいと考えがちだが、サーバー室の冷却ができない、トイレが使えない(停電の影響による)など思わぬところで深刻な影響が出ることがある。これも影響の大きさを重み付けし、それぞれに必要な対策を講じよう。
(3)輸送・道路
災害時は輸送機能がマヒすることは避けられない。これまでの災害では車両やドライバー、燃料の不足、あるいは鉄道の寸断、道路の大渋滞などが繰り返し起こっている。主要道路の封鎖が発生した場合を想定して複数の代替ルート(陸路・海路・空路など可能な限りのオプションをリストアップ)を決めておくことなどが必要である。
(つづく)
昆正和のBCP研究室の他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方