※画像はイメージです

~ABCDE(F)アプローチ~

朝から具合が悪いと言っていた中澤さん(44才男性、仮名)が作業中にあなたの目の前で崩れるようにうずくまってしまいました。「お~い、大丈夫か!」すぐさま駆けつけた同僚たちが中澤さんを取り囲み、抱え起こして声をかけます。中澤さんの顔色は青ざめ、額にはびっしょりと冷や汗をかき、息が荒くて苦しそうです。一体何が起こったのでしょう? 我々は何をすればよいのでしょう?! 

編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年3月25日号(Vol.48)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです(2016年10月27日)。

人間の生命は空気中の酸素を取り込み全身に供給することで維持されています。その為には空気の通り道(気道:きどう)が開通していなくてはいけません。気道から吸い込まれた酸素は肺で血液に取り込まれます。これが呼吸です。酸素を含んだ血液は心臓から全身へ送り出されます。これが循環です。循環によって脳に血液が流れることでさらに気道から酸素を取り込み、呼吸しようとするサイクルが作られます。このサイクルのどの部分が障害されても生命の維持は困難です。

はっきりとした病気の診断はすぐにはわからなくても、生命維持サイクルの中で一体どこが問題なのかを酸素の流れに沿って系統立てて評価する方法が今回紹介するABCDE(F)アプローチです。我々医師も全く同じ考え方で傷病者を評価しています。今回は特別なトレーニングを必要とせず非医療従事者の方々でも使えるようにエッセンスだけを凝縮した簡易版のABCDE(F)アプローチを紹介します。

A:Airway(気道)の評価と処置 

口や鼻から喉の奥、肺までの間の空気の通り道のことです。 

呼び掛けてみて、声が出れば気道は開通しています。いびきをかいていたり、喉の奥で痰が絡んだような音「ゴロゴロ…」等が聞こえると、完全に気道が開通しているとは言えません。 

気道を開通させる為にはあごを上げる方法があります。

また意識がない傷病者では「回復体位」という身体を横に向けて手を枕にする方法もあります。

吐物などで気道がふさがっているときは手でかき出すという方法もありますが、逆に喉の奥に押し込んでしまうこともあり注意が必要です。