NECが世界初のデータ解析技術を開発

NECは、世界で初めて土中水分量を解析することで、土砂斜面の崩壊の危険度をリアルタイム・高精度に算出できる新技術を開発した。

土砂斜面崩壊の危険度を算出するには、「土砂の重量」「水圧」「土砂の粘着力」「土砂の摩擦」など、降雨量により変化する土砂状態のデータを取得する必要がある。しかし、データをリアルタイムに得るには、専用のセンサを土中に設置する必要があり、コスト面などの課題があった。

今回開発した技術は、複数の指標データを「土砂に含まれる水分量」のみから算出可能にし、水分量を計測するだけで、リアルタイム・高精度に斜面の危険度が把握できる。従来に比べ、約1/3のセンサ数で斜面の「危険度」を算出できるため、従来と同じコストでより広範囲にセンサの設置が可能になる。土砂災害の危険性がある斜面を高精度に把握することで、住民の避難時間や安全を従来以上に確保し、迅速な避難勧告・指示が実現できる。

現在、土砂災害危険箇所に指定されるエリアは、日本全国で約52万箇所あり、全てに地質調査や対策工事を行うには多くのコストがかかる。

自治体が土砂災害の避難勧告・指示を発令する際の判断情報の一つに「土砂災害警戒情報」があるが、一部の自治体は、斜面に設置した監視カメラ・ワイヤセンサ・傾斜センサなどの情報も収集しながら避難すべき地域の特定、避難に伴う判断を行っている。この場合、前兆現象の把握から崩壊までわずかな時間となることもあり、土中に専用のセンサを複数埋め込むことで、早い段階から土砂斜面の危険度を算出する技術の開発が進んでいる。しかし、この算出には土砂崩壊の危険度の指標となる、土中の多様なデータを収集し解析する必要があった。

今回開発した技術は、水分計センサを用いて計測した、土中水分量データのみを用いて斜面の危険度をリアルタイム・高精度に把握可能にした。

本技術を用いた実証試験で斜面の「危険度」を算出した結果、土砂災害の危険性ありと判定した10分~40分後に実際に斜面崩壊が発生することを確認している。今後、自治体・大学・研究機関等と共同で本技術の実証実験を進め、2015年度中の実用化を目指す。