2018/07/24
危機管理の要諦
いかに早く体温を下げるか。氷の水風呂に患者を浸す
一方、救急科専門医の鶴和幹浩氏(株式会社 指導医.com代表取締役)は、熱中症は、発症初期には重症かどうかがわかりにくく、後で悪化することもあると指摘している。さらに、合併症率や死亡率は高体温の時間によるため、いかに早く体温を下げるか、まず必要になるのが冷却だと強調する。
http://www.risktaisaku.com/articles/-/1562
体温が高いままだと救急搬送を依頼している間にもどんどん病状は悪化していくため、とにかく、冷却を遅らせるようなことがあってはいけない。もっとも効果的な冷却方法は「氷の水風呂に患者を浸す」という治療法だという。鶴和氏によれば、水温15℃以下の水風呂に入れると、3~5分ごとに体温が1℃下がるので、それでも患者を10~15分間浸す必要があるそうだ。
実は、アメリカでも米疾病予防管理センターが熱中症患者に対して、冷水や氷風呂(ice bath)で可能な限り早く冷やすことを推奨している。
日本では、具合が悪くなっている人を氷水の中に入れるという対処方法は考えつきにくいし、仮にそれができる環境であったとしても、受け入れられ難いが、今後、熱中症の被害を軽減させていくためには、こうした方法も含め、どのような応急処置をどの程度続けることで、どの程度の効果があるのか、論的根拠を示していくことが必要だろう。
WBGTや外気温によるルールを
もう1点、すでに一部の企業ではすでに取り入れているが、暑さ指数(WBGT)や外気温、気象庁からの高温注意情報などを判断基準に、屋外での作業や運動を禁止にするなどのルールも整備することを検討した方がいい。7月17日には愛知県豊田市で小学1年生の男児が学校で意識を失い、搬送先の病院で亡くなる痛ましい事故が起こったが、特に小さな子供や高齢者がいる施設では、判断しやすいルールをマニュアルとして整備すべきではないか。
熱中症にならないように「こまめに水分を取る」といった自己管理は当然必要だが、それだけではなく、具体的に熱中症を発生させない環境の整備と、熱中症患者が目の前に発生したらどう対処するのかという視点を取り入れ、今後の対応を早急に整えていく必要がある。
(了)
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