職場の熱中症対策
2024年問題も踏まえた取組のすすめ
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
2023/05/09
ニューノーマル時代の労務管理のポイント
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
5月6日は立夏、夏の始まりです。政府では、毎年5月1日から9月30日までの期間に「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しています。地球温暖化の影響もあり、職場における熱中症による死傷者は年々増加傾向にあります。令和4年における熱中症による休業4日以上の死傷者は805人で、うち死亡者は28人となっています。事業者は、従業員に対して、労働契約に基づく安全配慮義務を負っており、従業員の命と健康を守るための対策を適切に行うことが求められます。熱中症による死傷災害を防止するにあたっては、主に次の対策の実施を徹底することが大事です。
①暑さに備えた事前準備を行う
・暑さ指数(WBGT値)測定器を準備し、暑さ指数を随時把握できる体制を整える
・休憩場所に冷房設備や氷、水風呂など体を冷やす設備を整え、飲料水や塩飴を置く
・冷却機能付きの服や通気性のよい帽子・ヘルメットを着用させる
・ゆとりある作業計画を策定する
・熱中症予防の教育を実施する
②暑熱順化の期間を設ける
・体を暑さに慣らすための期間を設ける
・梅雨明けや夏季休暇明けの際にも暑熱順化の期間を設ける
③健康状態を確認する
・作業開始前に体調を確認する
・作業中は管理職による確認のほか、お互いの健康状態を確認し合う
・健康診断の結果に基づき、就業場所の変更や作業転換などの措置を取る
④暑さ指数に応じた作業管理を徹底する
・暑さ指数の上昇に応じて、作業の中断又は短縮、休憩回数を増やす、休憩時間を長くするなどの対応を徹底する
・日陰になる時間帯に作業する
⑤定期的な水分・塩分の補給
・のどが渇いてなくても、定期的(作業開始前や休憩時等)に水分・塩分を補給する
⑥緊急時の病院への搬送
・本人又は周りの者が少しでも異変を感じたら躊躇(ためら)わずに病院へ搬送する
・病院に搬送するまで一人にしない(急な容態悪化により死亡するケースが多い)
暑さ指数の上昇や上昇のおそれがある場合に、作業を中断したり、休憩の回数や時間を増やす対応は、熱中症対策として必要不可欠ですが、これらの対策の実施により作業スケジュールに遅れが生じ、時間外労働や休日労働を行わせざるを得ない事態が発生することが想定されます。従業員に時間外労働や休日労働を命ずるにあたっては、予めその旨を就業規則に定め、時間外労働を行わせる具体的事由や業務の種類、対象者の人数や法定労働時間を超える時間数などについて労使協定(36協定)で定め、労働基準監督署に届け出ることが必要となります。熱中症対策の実施にあたっては、就業規則や見直しや労使協定の締結も忘れずに行うようにしてください。
なお、時間外労働については、2019年4月1日施行の改正労働基準法により、原則として月45時間、年720時間の上限規制が設けられており、2020年4月1日からは、中小企業にも上限規制が適用されています。また、月60時間超の時間外労働については、2010年4月1日施行の改正労働基準法により50%以上の割増賃金率が定められており、2023年4月1日からは中小企業への適用が開始しています。熱中症対策の実施にあたっては、時間外労働の上限規制や時間外割増賃金率の引き上げによる人件費への影響も踏まえた対応が求められます。
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