2種類の情勢判断 


図6に示すように情勢判断には大きく分けて「分析的意思決定」と「直感的意思決定」の2つに分類できます。「分析的意思決定」は、ある程度時間をかけて判断が可能な場合で、事態を想定してあらかじめ実施しておく判断や、予定している行動のための判断です。この場合は、時間をかけて情報収集や分析ができるため細かい対応が可能です。


一方、「直感的意思決定」は実施すべき対策や行動を検討したり、考えている時間が取れないような場合の判断です。何らかの問題が発生し、今、とっさに判断が求められるもので、私たちに求められるものはこちらが多いのではないかと思います。 

例えば、少し時間的には検討する余裕がある例ですが、BCPマニュアルとして、工場が被災した場合は代替工場を設定していたとします。実際に被災した場合、被災状況、周囲の状況などを勘案し、代替工場に移るかどうかを判断しなければならない場合や、大地震が発生し避難場所には避難したが、津波が来るという情報を得て、そのまま今の避難場所にとどまるのが安全か、ほかの避難場所を設定して移動した方が良いのかというような場合、特に後者のような場合には、数秒あるいは数十秒と言う時間で、その時点での最適な判断をしなければなりません。 

意思決定は一般的にディシジョンメイキングと言われ、あちこちで採用されていますが、ディシジョンメイキングは目的を検討して決定していくものです。とっさの判断を要する場合の意思決定が異なるのは、目的は責任者(指揮官)が知見、経験、感性を活かして決めるという事ではないかと思います(図7)。

最後になりますが、数秒や数十秒で正しい判断を下さなければならないことは、決して難しい事ではなく誰でも実施している事です。車を運転している時に、急に子どもが飛び出して来たらどうしようと考えてブレーキを踏む人はいないと思います。とっさにブレーキを踏んで停まるという行動をとるはずです。これは、子どもが飛び出してくるかもしれないといつも注意して備えているからだと思います。防災や事業継続に関しても同じで、平時から起こる事態を想定してどのような事象が発生したらどのように対処するかという事を考えておけば、とっさの判断ができるはずだと思います。ここで正しい判断を下すために大切なことは、何のためにと言う「目的」を間違えないことで、自分の「任務」と併せて「使命」を明確にしておくことだと思います。またこれらのように、瞬時に判断して行動するためにはイメージトレーニングを含めて教育・訓練が欠かせません。小規模な訓練でも継続実施しておくことが重要だと考えます。

(資料提供は全て後藤大輔氏)